いつか「ほんと」になれたら


 勉強しないといけないのは分かっている。分かりきっている。ワークのページ数からしても、睡眠時間を削っても終わるかどうかの瀬戸際だ。
 
 運動部に入ったわたしは、ほぼ毎日部活もあった。各教科から容赦なく出る宿題をこなすので必死で、中学入学以降、睡眠時間が減ってしまった。

 睡眠時間が減る──つまり、エリックと話せる時間も減るということになる。


 
 明日こそ9時に寝るからゆっくり話そう、なんて約束をした翌日に深夜1時に寝る羽目になったことも数え切れない。

 
 
 単純に会える時間が減ったばかりか、自分からした約束も破ってしまった。


 
 エリックに対してもっと誠実でありたいのに、それが出来ない自分が嫌になる。約束を嘘にしてしまった罪悪感だけが胸にどんどん溜まっていく。
 一瞬でもエリックと話せたら、声を聞けたら、疲れも全て吹き飛ぶのは事実だ。


 でも、それ以上に申し訳なさが勝ってしまう。

 エリックはわたしを責めないから、咲凜が忙しいのは分かってるって許してくれるから。その優しさに甘えすぎたらいつか、自分の言葉への信用も消えてしまうんじゃないかと怖くなる。

 
 嫌だ。それだけは絶対に嫌だ。嘘を積み重ねたあまり、エリックに嫌われたらどうしよう。
 

 
 罪悪感だとか自己嫌悪だとかが降り積もって、いっぱいになって、わたしはエリックに会いに行けなくなった。