いつか「ほんと」になれたら


「そっか、良かった…」
「どうして?」
「咲凜が頼れる相手が増えたから」
「……どういう意味?」
 
 わたしが頼れる相手が増えたら嬉しい…。

 助けてくれる人が増えるから、ってことかな。
 そう思ったけど、エリックの言葉の深い意味までは読み取れなかった。
 
「例えば、咲凜が困っている時。本当は僕が助けてあげれたらいいんだけどね、この体じゃそうもいかないから」

 確かに、去年男子生徒たちに絡まれた時、助けてくれたのはエリックじゃなくて燐人くんだった。
 こうやって夢の中で話していても、絵本の王子様であるエリックは現実世界で関わることが出来ない。

 ちなみに絵本から現実世界の様子は見えているらしいので、去年のことを気にしていたのだろう。

 
「だから、家族以外で、咲凜の味方になってくれる人が出来て嬉しい」
「…うん」
 
 さっきまでの真剣な顔を歪めて、ふわりと笑う。
 どんな表情をしていても、エリックには似合うし、本当に綺麗だと思う。

 
 でも、寂しさを笑顔で誤魔化されると、隠し事をされたみたいで悲しくなる。
 
「僕は何も出来なくてごめんね」