いつか「ほんと」になれたら

 時の流れというのは怖いもので、なんとわたしとエリックが初めて話した日から1年が経った。

 ちなみにわたしは、未だに夜9時には布団に入るようにしている。

「エリックー!!会いたかった〜!」
「咲凜。こんにちは…じゃなかった、こんばんは」
「こんばんは!」

 エリックが使った言葉というだけで、何気ない言葉も特別なものに思えるのはどうしてだろう。
 
 挨拶ですら、ものすごく上品に聞こえてしまうんだから不思議だ。


「それで、今日はどんな話をしてくれるの?」
「えーとね、学校の話!」

 燐人くんもエリックも、わたしの話を真摯に聞いてくれる。
 特にエリックは、最近はわたしから切り出す前に尋ねてくれることが増えた。
 
 わたしの周りは優しい人ばっかりで、本当に幸せ者だ。

 
「あのね、今日はね、ともだちと遊んだの」
「へー、友達はどんな人なの?」

 ふふ、その言葉を待っていた。
 エリックには友達の話はしたことがなかったから、聞いてくれると思ったんだよね。
 

「めるちゃんとよもぎちゃんって言うんだけどね」
 

 お転婆お嬢様な朝宮 芽蕗(あさみや める)ちゃんと、大人っぽい花苑 艾葉(はなぞの よもぎ)ちゃん。
 わたしにとって、人生で初めての親友と呼べる存在だ。
 
 2人ともすごく優しく接してくれて、一緒にいて楽しい。
 ほとんどの人にはエリックのことは話せていないけど、この2人にはいつか話したいと思っている。

 わたしがそう言うと、エリックは嬉しそうに目を細めた。