俺が守ってあげなきゃ?
目を離さないようにしなきゃ?
馬鹿馬鹿しい。
そんなの、全部俺の一方的なエゴだろうが。
咲凜が守って欲しいと思う相手はエリックだ。
だから、俺に出来ることなんて、何ひとつもないのに。
「りんとくん、おはなししてくれてありがとう!」
「いいえ。俺の方こそ咲凜の話、聞けてよかった」
居場所が欲しくて。世界で俺にしか出来ない、俺だけの役割が欲しくて。
頼られたいから、嘘をつく。
咲凜と話していて楽しいのは事実だ。
ただ、エリックとの惚気ばかり聞く羽目になるから、ほんとは少しだけ疲れる。
この前、父さんと母さんが、咲凜が絵本の王子様に恋していることを心配しているのを聞いた。
だから、咲凜がエリックの話を気軽に出来る相手は、俺だけ。
男子生徒から助け出した時の一言がきっかけでも、その事実に変わりはない。
出会った頃から、咲凜がずっとエリックが好きだったことは知ってる。否定も邪魔もしたくない。
兄として、笑ってお祝いしてあげたい。
咲凜にとっての、何かになりたい。
彼女の視線が一瞬でもいいから欲しい。
そう願ってしまうこの醜い感情に、俺は気づかないふりをした。



