いつか「ほんと」になれたら

「エリック?なんか言った?」
「ううん、なんでもないよ。天気、教えてくれてありがとう」
「うん…!」
 
 こうやって話すことが出来て、自分の言葉で頬を染める咲凜が可愛い。咲凜といるから、僕は今日も幸せ。
 それだけでいいじゃないか。
 
「えっと…、咲凜は雨、好き?」
「あんまりすきじゃないかな……。エリックは?」
「僕は好きだよ」
「そうなんだ」

 君の世界に優しく降り注ぐ、雨になりたい。

 咲凜がこれまで抱えてきた辛い感情も、忘れたい思い出も、全部を洗い流してしまいたい。
 自由になった咲凜の手を取って、今度こそ僕が連れ出すから。

 行き先はどこがいいだろう。2人で色々な場所を旅するのなんかもいいかもな。


 僕がそんな妄想に浸ってる間に、咲凜にも何か思うことがあったらしい。ずっと悩んでいたようだったけど、その日ようやく話してくれた。

  
「あの…、エリック」
「どうしたの?」
「えっと、その」
「うん。ゆっくりでいいよ」


 僕は、咲凜から話そうと思ってくれるなら、いつまででも待つから。それこそ10年後だろうと20年後だろうと、隣で待ってるから、咲凜のペースでいいんだよ。