いつか「ほんと」になれたら

 咲凜のことを大切にしたいし、幸せになって欲しいけど、自分以外と、は嫌。この気持ちは何だろう…。

 咲凜と過ごす夢の中の時間は、本当に幸せなものだった。
 しかも、僕との時間を増やすために、咲凜は早く布団に入ってくれているらしい。

 彼女が好意を向けてくれるたびに、僕の心臓はうるさく鳴り響く。
 
「エリック、聞いて!」

 
 そんな言葉を聞くだけで、僕の世界は華やぐ。今日の咲凜はどんな話をしてくれるんだろう。
 
「どうしたの、咲凜?」
「今日の天気はね、雨だったんだよ」
「そうだったんだね」

 咲凜の中の僕は、些細なことでも話したいと思える相手、なのかな。自惚れた自分の想像に、口角が上がっていくのが分かる。
 
 この時間が永遠に続いてしまえばいいのに、とさえ思う。
 そうしたら咲凜とずっと2人きりで、しかも彼女は僕だけを見ていてくれる。


 僕にとってはメリットしかないけど、でも、それでは駄目なんだ。
 咲凜はきっと幸せになれない。

 そこですんなりと咲凜の名前が出てきたことに、自分でも驚く。これじゃあまるで、咲凜と一緒に生きたい、って言ってるみたいだ。


 それは、決して叶わない夢のはずなのに。

「……僕は本当に馬鹿だな」