いや、咲凜もまだ年端もいかない少女だし、おままごともするのかもしれない。
昔やった時は僕の声は咲凜に届かなかったのと、途中までしか出来なかったのとで、やり直したかったし。
僕としても非常に都合がいい。
「小さい子のあそびらしいけど、エリックとまたやりたいなって」
たぶん咲凜は、おままごとそのものがしたい訳じゃない。僕となら、やり直したいと思ってくれているのだろう。
これも自惚れかもしれないし、僕の独りよがりな妄想かもしれない。でも、本当に嬉しかった。
「分かった。咲凜がお母さんで、僕がお父さんでいい?」
「もちろん!」
些細な会話ひとつにも、溢れんばかりの幸せを感じる。
隣に咲凜が居て、僕の言葉が届く。
現実世界ではどうであろうと、今この瞬間の咲凜にとって1番近くにいるのは、間違いなく僕だ。
ここは咲凜の夢の中ではあるけど、彼女の手に触れることだって出来る。
昼間、僕が願ったものが、ここには全部揃っている。
「おかえりなさい、エリック」
「ただいま、咲凜。大好きだよ」
咲凜と話せたことに浮かれていたのか、気がついたら心の内を言葉にしてしまっていた。
ごまかすようにふわりと微笑みかければ、咲凜は頬を桜色に染めて、同じ言葉を返してくれた。
「わたしもだいすき!!」
今はただ、彼女の小さな体ごと抱きしめたくて仕方なかった。



