いつか「ほんと」になれたら

「え…ほんもの……?」
「ふふ、咲凜は面白いことを言うね」

 僕の言葉に、咲凜はしっかり3秒フリーズする。
 ここまで驚いた顔、初めて見たかも。
 
 そして咲凜がふわりと顔を綻ばせた途端、その表情から目が離せなくなる。


 降り積もった雪を解かすような、咲凜のやわらかい笑顔が好きだ。
 思わずじっと見つめてしまっていると、僕の視線に気づいた咲凜の頬はほんのりと赤く染まる。

「エリック…あいたかった」
「僕もだよ、咲凜。会いたくて仕方なくて、夢の中まで来ちゃった」
「来てくれてうれしい!」

 でも、僕はどうやってここに来たんだろうか。体内の魔力が減っている感覚もするし、たぶん魔法なんだけど。

 だけど、そんな魔法は聞いたこともないし、もちろん使ったこともない。基本的に魔法って呪文を唱えないと使えないはずなんだけど…。


 ……そんなこと、今はどうでもいいな。咲凜との時間が最優先だ。

「じゃあ咲凜。何しよっか」
「おままごと、しよ!」

 考えごとをしていた僕が言えることではないけど、この時間を1秒たりとも無駄にしたくなくて。
 若干食い気味で咲凜が放った言葉は、想定外のものだった。

 
「おままごと…って出会ったばかりの頃にやってたものだよね」
「うん」
 
 てっきりあのくらいの年齢の子供がやる遊びだと思っていたから、まさかもう一度やることになるとは。