いつか「ほんと」になれたら

 お兄ちゃん……。咲凜に?
 
 先に言って欲しかった。 
 咲凜が、咲凜が、僕に興味をなくしたらどうしよう。

 一緒に遊ぶ時間が減っていったら、僕はどうなってしまうんだろう。


 人の心変わりは世の常、好きに永遠なんてない。そんなことは分かっている。
 でも、咲凜はきっと違うって。2人並んで歩く未来も見えた。

 
 なのに、何でこんなに不安になる。
 
「あら、もしかして言ってなかった?」
「…」
「…まぁ、会えば分かるわ」


 咲凜が、新しい兄とやらじゃなくて、僕を見ていてくれますように。
 
 どうか、その兄が、つい惚れちゃうようなイケメンじゃありませんように。


◇◇◇


「ほら、燐人(りんと)も挨拶しなさい」
「分かってるよ、父さん」

 
 イケメンだった。

 普通にかっこよかった。

 
 
 咲凜も僕も、食い入るように見つめてしまうほど、彼は綺麗だった。…いや、顔立ちが整っているって言った方がいいのか。

 自分で言うのも何だけど、綺麗──つまり中性的なのは、どちらかと言えば僕だから。

 
「初めまして、咲凜。俺は白雪燐人って言います」
「…りんとくん。えみりです」


 あぁ、もう!

 顔もいいし、物腰だって柔らかいし!
 咲凜、燐人のこと好きになったりしないよね…?