いつか「ほんと」になれたら

 太陽の光が心地よい日曜日。
 
「ふふ、早く咲凜にも会って欲しいな〜」

 そう話す咲凜の母親の声は、弾んでいる。
 
 この流れ、何回目だろう。そう思ったのは僕だけではないようで、咲凜も不満そうだ。
 
「それさっきも聞いたー」
「だって本当に素敵な人なんだもの!」

 
 腕に抱えられている僕──ポジションで言うと絵本の表紙からは、ツンと口を尖らせた咲凜がよく見える。

 
 僕たちの出会いから3年が経ち、どれだけ見た目が成長しても、色んな言葉を知っても、中身だけはあの日の、僕の咲凜のまんまだ。

 太陽みたいに眩しくて、花が咲くように笑う、元気いっぱいの無邪気な少女。それが咲凜。



 この3年間の宝石箱みたいに輝きに満ちた記憶と、コロコロと変わる咲凜の表情を僕が思い出していると、ふいに咲凜の母親はこんなことを言った。
 

「でも、咲凜もお兄ちゃんができるの楽しみでしょう?」


 え。