いつか「ほんと」になれたら

 
「え、わ、わたし?」
「そうだよ。僕の世界に意味をくれるのは、いつだって咲凜だよ」
「エリック…!」


 どうして、そんなに優しい目でわたしを見つめるの。
 どうして、いつもわたしの欲しい言葉をくれるの。
 

 その瞳が、何回わたしの心を奪ったか。
 その言葉が、どれだけわたしを安心させてくれたか。

 きっとエリックは知らない。どれも無意識、なんだろう。

 本当にずるい。ずるいなぁ…。


 見た目も、声も、話し方も、笑い方も、性格も、全部含めてエリックが好き。

 好きがどんどん膨らんでいって、いつかわたしを飲み込んでしまうんじゃないかってくらい好き。大好き。


 好きな人って聞かれたらすぐにエリックの顔が思い浮かぶし、一緒にいたい人って聞かれたら迷わずエリックと答える。
 
 恋、なのかなって思う。
 
 
 お母さんやお父さんが話していた、その感情に似てるなと感じることがある。

 エリックのことならもっと知りたい。側にいたい。一緒にいるとどうしようもなくドキドキするし、何でも楽しめる気がする。


 でも、わたしのこの気持ちは“身を焦がすような”とか、“他のことはどうでもよくなる”だとか、そういうものではないと思う。

 燃える想いじゃなくて、おひさまみたいに温かくて、心も体もぽかぽかするような気持ちだ。

 だから、この感情の名前は。
 
  
 情熱的な“恋”ではない。
 家族に向ける“愛”とも違う。
 尊敬の“憧れ”も少しはあるけど、ちょっと違う。



 この気持ちは、本当に何なんだろう。
 必死に考えてみたが、答えは見つかりそうになかった。