いつか「ほんと」になれたら

 エリックの悪口を言われまくる、あの地獄の空間。

 絵本の王子様に恋をしていることも、何もかも馬鹿にされた。



 そこから走って走って、ひたすら走って、なんとか逃げ出してきた。その後はわたしを連れ出してくれた燐人くんと、お互いの話をしながら家に帰った。

 
 2人でちゃんと話したのは始めてで新鮮な気持ちだったけど、それもこれから日常となるのだろう。


 きっと、わたしと燐人くんは、本物の兄妹みたいに仲良くなれる。
 ただの直感ではあるが、それでもわたしの中で何か確信めいたものはあった。
 
 そう感じたのは燐人くんも同じだったようで、家に帰ってから眠るまでの短い時間も、わたしのことを何かと気にかけてくれた。


「咲凜、おやすみ。いい夢見てね」
「うん! おやすみ、りんとくん」


 わたしが満面の笑みで返事をすると、燐人くんはわたしの頭をそっと撫でてくれる。


 他の家庭からすれば、これも当たり前のことかもしれない。でも、少なくともわたしと、燐人くんにとってはとても特別なことだった。

 
◇◇◇


 その日の夜、わたしは燐人くんがかけてくれた言葉どおり、“いい夢”を見た。
 というか、魔法みたいな奇跡の体験をした。