いつか「ほんと」になれたら



 それにしても、まだ小学生だというのに、彼から溢れ出るカリスマ性…みたいな、オーラは異常だった。

 彼の一挙手一投足、行動の全てが大人びていて、わたしと大して年が変わらない、なんて嘘みたい。
 
 

「初めまして、咲凜。俺は白雪燐人って言います」
「りんとくん。えみりです」

 
 なぜだか、お兄ちゃんという言葉は出て来なかった。
 
 
 あの時のわたしにとって、燐人くんは兄と呼ぶには、遠すぎる存在だったからだと思う。

 

 一緒に遊んでくれる、近所の高校生のお兄さんみたいな感覚だったとでも言えばいいのだろうか。
 
 
 本物の兄妹みたいに側でお互いに成長していくんじゃなくて、燐人くんは遥か前方にいる。その背中に声をかけることすら叶わない。
 

 まだ出会って1日だけど、既にそんな未来が見えてしまった。

 仲良くなれても、きっとわたしたちは本当の意味での兄妹にはなれない。血的にも、精神的にも。
 
 
 そして、わたしにはエリックがいるから、エリックだけが好きだから、それでいいんだ。
 相手は絵本の王子様。望みなんてないかもしれない恋だけど、わたしは諦めたくない。

 どこまでも本気なこの気持ちを、笑われたくないから、わたしは周りの人と距離を置く。
 
 
「今日からよろしくね、りんとくん」
「こちらこそだよ、咲凜」


 ほんの小さな呼び方の違いが、後のわたしたちに大きな波紋と悲劇を生むことを、この時のわたしはまだ知らない。