「ふふ、お母さんも咲凜がだーいすき!」
母親に何度も聞き返して、難易度の高すぎるタイトルを必死に覚えた彼女は、僕を見て唐突にこう呟いた。
「おうじさま、すっごくかっこいい……」
かすかに熱を帯びた、その表情に嘘はない。
てっきり、絵本のタイトルについて文句を言われると思ったのに。漢字ばっかりで、覚えるのにも苦労してただろうに。
それどころか、恋愛感情ではないとしても、これほどの好意を向けられると、僕まで調子が狂ってしまう。
「あら、まさかの初恋?」
彼女の母親の言葉に、なぜかどきりとした。
そっか、初恋……。
黒曜石みたいな、汚れを知らない、無垢で美しい瞳を見やる。
その瞬間、僕には確かに未来の景色が見えた。
今よりもずっと綺麗になった君と、その隣で笑う僕。
身長も距離も縮まった僕たちの間には、“絵本の持ち主と王子”よりももっと強い何かがあるように感じた。
肩を寄せ合う姿は、まるで恋人同士みたい。
初恋、恋人………。
それはつまり。
遠い未来まで、僕を好きでいてくれる君へ。
ねぇ、僕はここにいるよ。
ひたすらに僕を見つめている君と目を合わせる。
君は、ぱちりと瞬きをした。
それから、絵本を包装紙から取り出した時と同じように、その瞳は大きく開かれる。
──これが、僕が咲凜に捧げる最初の魔法だ。
母親に何度も聞き返して、難易度の高すぎるタイトルを必死に覚えた彼女は、僕を見て唐突にこう呟いた。
「おうじさま、すっごくかっこいい……」
かすかに熱を帯びた、その表情に嘘はない。
てっきり、絵本のタイトルについて文句を言われると思ったのに。漢字ばっかりで、覚えるのにも苦労してただろうに。
それどころか、恋愛感情ではないとしても、これほどの好意を向けられると、僕まで調子が狂ってしまう。
「あら、まさかの初恋?」
彼女の母親の言葉に、なぜかどきりとした。
そっか、初恋……。
黒曜石みたいな、汚れを知らない、無垢で美しい瞳を見やる。
その瞬間、僕には確かに未来の景色が見えた。
今よりもずっと綺麗になった君と、その隣で笑う僕。
身長も距離も縮まった僕たちの間には、“絵本の持ち主と王子”よりももっと強い何かがあるように感じた。
肩を寄せ合う姿は、まるで恋人同士みたい。
初恋、恋人………。
それはつまり。
遠い未来まで、僕を好きでいてくれる君へ。
ねぇ、僕はここにいるよ。
ひたすらに僕を見つめている君と目を合わせる。
君は、ぱちりと瞬きをした。
それから、絵本を包装紙から取り出した時と同じように、その瞳は大きく開かれる。
──これが、僕が咲凜に捧げる最初の魔法だ。



