いつか「ほんと」になれたら

「……エリック?」
「咲凜! 会いたかった」

 
 出会った日と変わらない、大きく見開かれた瞳。
 見つめ合った数秒間が、すごく長い時間のように感じる。
 
 うるさく鳴り続ける心臓が、この状況が夢じゃないと教えてくれる。

  
「すっごくかっこいい……」
「咲凜の好みならいいんだけど」

 
 まっすぐなその視線を受けるのは久しぶりで、照れ隠しでそっけない返事をしてしまった。
 そういえば、咲凜は初めて僕を見た時も同じことを言っていた。

 僕は自分の顔を見ても何も思わないけど、咲凜が好きでいてくれるならそれに越したことはない。
 ついでに、褒められたらやっぱり嬉しい。

 驚きすぎたのか、立ち尽くしている咲凜に近づいて、左手を取る。
 その手は思ったよりも小さかった。力を込めたら、簡単に折れてしまいそうで不安になる。


 
 次こそは僕が守る。幸せにする。このキスが誓いの証。

 
「迎えに来たよ、お姫様」

 
 微笑んだ僕に、咲凜が重ねてくれた手は、もう離さない。
 潤んだ瞳も、嬉しそうに緩められた唇も、赤くなった頬も、全てが愛おしい。


 いつか見た未来の景色のように、恋人として隣を歩けるかな。
 咲凜の過ごしてきた世界をもっと見てみたい。

 この世界では僕はもう王子様じゃない。

 魔法だって、堂々とは使えなくなると思う。
 というか、魔法の存在しない世界だから、僕も初歩的な魔法でさえ出せない可能性が高い。

 
 今は絵本の世界とは違う、何もないただのエリックになった。
 でも、僕の隣には咲凜がいる。
 その事実がどんなに嬉しいか。どんなに勇気づけられるか。


 咲凜がいれば僕は何だって出来るし、何にだってなれる。
 王子様じゃなくていいから、咲凜の1番になりたい。