いつか「ほんと」になれたら

 そして、小さな手に渡される。手のサイズからして、“咲凜ちゃん”で間違いないだろう。
 
「……気に入ってくれたらいいけど」

 “おかあさん”は、ぶっきらぼうに言ったものの、その声は弾んでいた。…素直じゃないなぁ。
 
「これ、なぁに?」
「開けてみれば分かるわよ」
「あけるよ!?いーい!??」
「もちろん!!」


 声の幼さとはしゃぎ具合からは想像も出来ない程丁寧に、“咲凜ちゃん”は包装紙を剥がしていく。


 やがて、綺麗に破かれた包み紙の合間から、“咲凜ちゃん”の、輝く瞳が僕の姿を映した。

 どうだろう、気に入ってくれるかな?


 一瞬固まった彼女だったが、段々とその表情は明るくなっていく。まるで、そこらじゅうに花が咲いたみたいだと思った。

 
「…えほんだ!!」
「どう?気に入った?」
「うん!!!おかあさんだいすきー!!」
 
 心からの喜びがこっちにまで伝わる、きらきらと眩しい笑い声。
 母親も、部外者の僕でさえも、明るい気持ちにしてしまう彼女は、まさしく太陽だった。