【1】静かな朝の予感
澄んだ空気が教室に満ちる中、ひよりは窓の外を見つめていた。
冬の寒さにも負けない澄んだ青空が広がり、けれど彼女の胸はざわついていた。
(最近、理央くんと話す時間が少なくなった気がする……)
そんな小さな寂しさが、胸の隅にひっそりと芽生えていた。
【2】理央の秘密の思い
理央は放課後、誰にも見せない表情でスマホを握りしめていた。
彼の心の中には、ひよりに伝えたいけれど言えないことがあった。
(ひよりを守りたい。けれど、秘密が重くて、近づきすぎるのが怖いんだ)
そんな葛藤に、彼の胸は締め付けられていた。
【3】すれ違う二人の距離
教室で偶然すれ違った二人。
目が合うはずなのに、どこかぎこちない。
(どうして、こんなに心が通じ合わないんだろう……)
ひよりの胸に、ぽっかりと穴が空いたような切なさが広がる。
【4】放課後の小さな約束
それでも放課後、二人はいつもの校庭で再会した。
理央が少しだけぎこちなく言った。
「ひより、今日は話せてよかった。君といると、少しずつだけど強くなれる気がする」
ひよりは笑顔で答えた。
「私もだよ、理央くん。だから、もっと一緒にいよう」
【5】心の奥のときめき
ひよりの胸は小さな波紋を描き、初めての甘いときめきを感じていた。
(もしかして、これが恋……?)
それは彼女の成長の一歩でもあり、二人の距離を縮める大切な瞬間だった。
【6】胸のざわめき
放課後の教室。夕陽が差し込む中、ひよりは席に座りながらも集中できずにいた。
(理央くんと過ごす時間は大切なのに、なんでこんなにぎこちなくなっちゃうんだろう……)
手のひらにそっと触れたスマホの画面には、理央からの未読メッセージ。
「今度、話したいことがあるんだ」
その短い一文に、ひよりの胸は期待と不安でいっぱいになった。
【7】理央の葛藤
理央は自室の窓辺に座り、深く息を吐いた。
(本当は、全部話したい。だけど、ひよりには重すぎるかもしれない――)
スマホを握りしめ、何度もメッセージを消そうとしたが、結局送信ボタンを押した。
【8】距離が近づく瞬間
翌日、ひよりは放課後に理央と約束した場所へ向かった。
校庭のベンチに座る理央は、少し緊張した面持ちで彼女を待っていた。
「ひより、話してくれてありがとう。君には嘘をつきたくない」
そう言って、理央は小さな秘密の一端を静かに打ち明けた。
【9】心を通わせる時間
二人はゆっくりと話を重ねるうちに、互いの理解と信頼を深めていった。
ひよりは理央の弱さも強さも受け入れ、理央もまた、ひよりの瞬間記憶の重みを感じ取りながら、支えようと決めた。
【10】初めての告白
会話の終わり、理央が小さく呟いた。
「ひより……君のことが、好きだ」
ひよりの頬が紅く染まり、心臓が高鳴った。
「私も、理央くんのこと、ずっと好きだった」
【11】未来への希望
二人の間に柔らかな光が満ちていく。
これからも、困難や秘密があっても、二人で乗り越えていける。
そう信じられる瞬間だった。
【12】夕暮れの約束
夕焼けに染まる校庭のベンチで、ひよりは理央の横顔をじっと見つめていた。
風に揺れる彼の髪。少し緊張しているのが手に取るようにわかる。
(こんなにも近くにいるのに、まだ知らないことがたくさんあるんだな……)
理央は小さく息をつき、目を伏せた後、やわらかく笑った。
「ひより、いつもありがとう。君がいてくれて、本当に救われている」
【13】心の壁がゆっくり溶ける
ひよりは手を伸ばし、そっと理央の手を握った。
その温かさが、胸の奥のざわめきを和らげていく。
「私も、理央くんがいるから頑張れる。どんなことがあっても、一緒に乗り越えようね」
理央は照れたように笑いながら、ぎゅっと手を握り返した。
【14】未来を願う瞬間
静かな時間が二人を包む。
遠くで鳴く鳥の声。冷たい風に揺れる葉音。
「これからもずっと、君と一緒にいたい」
理央の言葉に、ひよりの頬がほんのり赤く染まる。
【15】不安の種
しかし、その幸福なひとときの陰で、学園の片隅では黒い影が静かに動いていた。
(あの二人の絆が深まるほど、計画はより複雑になる――)
冷たい笑みを浮かべる人物の目が、闇の中で光っていた。
【16】次なる波乱の予兆
ひよりは胸の奥にわだかまる不安を感じながらも、理央と共に歩む未来を信じていた。
(大丈夫。二人ならきっと、どんな困難も乗り越えられる……)
【17】ひよりの胸騒ぎ
夜、自室のベッドに横たわりながらも、ひよりの瞳は冴えたままだった。
理央と交わした“好き”の言葉、
ぎこちないながらも確かに結ばれた手の感触――
それは温かくて、夢のようで、だけど同時に胸をざわつかせる。
(幸せなのに、どこか不安……)
そのとき、スマホの通知音が鳴った。画面には、
「理央の過去を知ってるか?」
という差出人不明のメッセージ。
背筋がすっと冷たくなった。
【18】理央の沈黙
翌朝、登校してきた理央は、どこか様子がおかしかった。
目の下に薄く影を落とし、何かを隠しているような笑顔。
ひよりが声をかけようとしても、彼は少し間をおいてから――
「今日は……放課後、話がしたい」
それだけを残し、彼は教室を出て行った。
【19】放課後、ふたりの選択
夕暮れの図書室。誰もいない窓辺の席で、理央とひよりは向かい合っていた。
沈黙が続いたあと、理央は静かに口を開いた。
「僕は、父の計画に深く関わってる。
“記憶を操作する技術”――それを、僕も手伝ってたんだ。政府の機関と一緒に」
ひよりは息を飲んだ。想像を超える重い真実。けれど、その瞳は逃げなかった。
「だからこそ、今は止めたい。
そして……君に、ちゃんと気持ちを伝えたかった」
【20】それでも、信じたい
ひよりは涙ぐみながら、でもしっかりと理央を見つめていた。
「秘密があっても、過去がどんなに重くても……
私は、理央くんのことが、好きだよ」
震える声で告げると、理央は目を見開いた後、ふっと笑った。
「……ありがとう。君にそう言ってもらえて、僕は初めて自分でいられる気がする」
それは、ふたりの関係にとって、本当の始まりの一歩だった。
【21】忍び寄る影
その夜。学園の裏手、古びた実験棟の屋上で、ひとりの人物が立っていた。
その背には、政府の記章をつけたファイル。
「二人が動いたか。ならばこちらも、実行に移すとしよう」
ファイルには、大きく赤い字でこう記されていた。
『記憶保持者:桃井ひより 回収対象』



