【1】突然の呼び出し
秋も深まるある日。
放課後の教室で、ひよりのスマホが震えた。
【From:理央】
「校庭の桜の木の下、急ぎ来てほしい」
「何だろう……?」
謎めいたメッセージに胸が高鳴る。
ひよりは足早に校庭へ向かった。
【2】桜の下で告げられた秘密
桜の花びらがひらひらと舞う中、理央は静かに待っていた。
「実は、君に隠していたことがあるんだ」
彼は少し躊躇しながら話し始めた。
「僕の父は、政府の秘密プロジェクトに関わっていて――
その影響で、僕には特別な“記憶の迷宮”がある」
「記憶の迷宮……?」
【3】迷宮の入り口
理央は語る。
「それは、脳内に設けられた一種のセキュリティシステムで、
僕が知ってはいけない記憶や情報を守っているんだ」
「でも、どうして君にそれを?」
「君の“瞬間記憶”と合わせれば、僕の迷宮を解く手がかりになるかもしれない」
【4】二人の約束
ひよりは目を輝かせた。
「じゃあ、わたしにしかできないことがあるんだね!」
理央も笑った。
「そう。これから二人で、一緒に挑むんだ」
その手が、固く握られた。
【5】迷宮の入り口にて
理央の父が関わる秘密プロジェクトの資料を手に、
二人は学校の図書館へと向かった。
「ここに、理央くんの迷宮に関する記述があるはず」
薄暗い書架の隅で、ひよりはその資料をじっと見つめる。
【6】封印された記憶の断片
ページをめくるたびに、情報が増えていく。
そこには、「脳の特殊領域」「記憶防衛システム」「意識と無意識の境界線」といった専門用語が並ぶ。
「この“迷宮”は、普通の人には解けないし、危険も伴う」
理央の言葉に、ひよりは緊張しながらも決意を固めた。
「怖いけど、理央くんのためなら頑張る!」
【7】初めての迷宮テスト
二人は特別なVR装置を使い、理央の脳内迷宮へ仮想体験に挑戦することに。
暗く、迷路のような空間の中を、ひよりの能力が光を放つ。
「瞬間記憶で、この複雑な情報を全て覚える!理央くん、僕を信じて!」
理央はひよりの背中に手を置き、静かにうなずいた。
【8】不意の罠
迷宮の奥に進むうち、突然視界が歪み、警告音が鳴り響いた。
「罠だ……!」
ひよりは必死に記憶をたどり、罠の解除方法を見つけ出す。
「大丈夫、理央くん。私たちなら、きっと乗り越えられる!」
【9】迷宮の奥深く
仮想空間の迷宮は深く、複雑に入り組んでいた。
ひよりの瞬間記憶能力が、光となって闇を照らし、迷路の行く先を示す。
「ここは……誰かの大切な記憶の断片?」
不意に、映像が流れた。
若き日の理央の姿。笑い声。友人との会話。けれど、どこか影が差している。
【10】理央の過去と決意
映像が途切れたあと、理央の声が仮想空間に響く。
「僕は、父の期待と重圧の中で育った。
でも、本当の僕は何者なのか、自分でもわからなかった」
ひよりはそっと理央の手を握る。
「だからこそ、あなたがいることで、私は私でいられる。二人なら迷わないよ」
【11】心のつながり
迷宮が揺れ、壁が崩れ落ちる。
「危ない!」
ひよりは理央を抱きしめ、二人は暗闇を共に乗り越えた。
「これからも、ずっと一緒にいよう」
理央の言葉に、ひよりの胸は高鳴った。
【12】学園に忍び寄る影
一方、現実の学園では、謎の人物が校門の外から監視を続けていた。
(この二人の絆が強まるほど、計画は複雑になる――)
薄く笑いながら、携帯を手に取る。
「次は、もっと大きな動きを見せてやる」



