―ユウナ&こよみ視点
【1】あたしのヒロインは、君だけだよ
ユウナは、まっすぐな子だった。
明るくて、元気で、ちょっとだけ泣き虫で、でも絶対に立ち止まらない。
──そんなユウナに、こよみはいつだってカメラを向けていた。
「なんで、わたしばっかり撮るの?」
「そりゃ決まってんでしょ。君、今日も最高に“推し”だから」
「……それ、からかわれてる?」
「マジ本気なんだけど?」
そう言って笑ったとき、こよみの心には本当に“本気”があった。
でも、それを自覚するのに、少しだけ時間がかかった。
【2】名前じゃなく、気持ちで呼んで
ある日の帰り道。
ユウナが、ふとつぶやいた。
「ねえ……先輩って、誰かのこと本気で好きになったことある?」
「……あるよ」
こよみは、少しだけ間を置いて答えた。
「名前では呼べない人だけど」
ユウナは不思議そうにこよみを見る。
「じゃあ、逆に、名前で呼んだら?」
「え?」
「“こよみ”って呼んでほしいな。先輩、いつも“君”って呼ぶでしょ」
こよみの視線が、ふと揺れる。
「……呼んだら、止まらなくなりそうで」
「じゃあ、止まらなくなってみて」
【3】告白未満、想い以上
春休みの終わり、ふたりは近くの桜並木を歩いていた。
「来年も一緒に、この景色見たいな」
ユウナがぽつりとつぶやいた。
こよみはカメラを下ろし、静かに彼女の隣に立った。
「来年も、その先も……“君”となら、どこへでも行ける気がするよ」
「また“君”って呼んだ!」
「うわ、ごめ──」
「……でも、うれしい」
ユウナはちょっとだけ、照れくさそうに笑って言った。
【4】カメラ越しじゃなく、真正面から
別れ際、こよみはとうとう言った。
「ユウナ、俺……君のことが、好きだと思う」
ユウナの目が大きくなる。
「……“思う”って、何? 思う、って、保険かけてるみたい」
「じゃあ、やり直す。
ユウナ、俺は君が好きだ。君の泣き顔も、笑い顔も、撮ってきた全部が、俺の心に残ってる」
「……ずるいよ、先輩。そんな風に言われたら……」
ユウナは、ぎゅっとカメラを抱きしめてから、そっとこよみの手を取った。
「わたしも、先輩の笑い顔がいちばん好き」
【5】春風の中、始まる“ふたり”
桜が舞う中、ふたりは静かに歩き出す。
これから付き合うかどうか、告白の続きは明日になるかもしれない。
でも、お互いに“向き合っている”ことだけは、確かなスタートだった。
「……ねえ、先輩」
「うん?」
「カメラ、これからはふたりの写真も撮っていい?」
「もちろん。俺の“推し”は、君だから」



