◆日曜・午前11時/代官山駅前
カジュアルな白シャツにロングスカートの汐音。
緊張した面持ちで、駅の改札で立っていると、奏多が後ろから軽く声をかける。
奏多「白石……いや、今日くらい“汐音”って呼んでもいい?」
汐音(驚きつつ、小さくうなずいて)「……はい」
奏多「そっちのが、“恋人っぽい”し」
汐音(顔真っ赤)「……っ、も、もう、急にそういうの……」
◆おしゃれなカフェにて
人気のブックカフェ。ふたりで並んで座る席。注文はそれぞれ“ホットチョコ”と“カフェラテ”。
汐音「こんなとこ、初めてです」
奏多「たまに曲作る時、ここの2階の静かな席で書いたりする」
汐音「そういうの……かっこよすぎません?」
奏多(照れ隠しで本をめくりながら)「かっこいいのは……今日の汐音もだろ」
汐音(噴きそうになって)「コーヒー返してください!」
◆街歩きデート・音楽ショップにて
レコードや楽譜の並ぶ店内。奏多が汐音にイヤホンを片耳だけ差し出す。
奏多「これ、こないだ汐音の演奏にのせて作ったやつ。
ピアノの音、まだ残ってる」
汐音がそっと聴き、目を丸くする。
汐音「わたしの音……が、ちゃんと曲になってる」
奏多「“一緒に作ってる”って思いたくて」
汐音(小さく微笑んで)「ちゃんと、伝わってます」
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◆夕方・川沿いのベンチ
買い物袋を置いてひと休み。赤く染まった空を見ながら、ふたり静かに寄り添う。
汐音「今日、“大学”のこと忘れそうでした」
奏多「俺は、汐音が“誰にも見られずに笑ってくれる日”をずっと待ってたんだと思う」
汐音(胸が熱くなって)「……先輩って、時々ずるいくらい優しいです」
奏多(真剣な声で)「ずるいのは俺の方。こんなに、お前に夢中になってるくせに、
“秘密の恋”で甘えてる」
汐音(目を伏せて)「……私は、“秘密のままでもいい”って思ってました」
奏多「でも、本当は?」
汐音(しばらく沈黙してから)「……あなたの“恋人”って、ちゃんと言える日が来たら、
きっと私は……もっと強くなれます」
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◆帰り道・駅のホーム
電車を待つホーム。汐音が乗る直前、奏多が小さく囁く。
奏多「……今日はありがとう。ほんとに、幸せだった」
汐音「私もです。
大学じゃ何も言えなくても……今日はずっと、先輩の“彼女”でした」
ドアが閉まる前、汐音がふと――口パクで「好きです」と伝える。
奏多(笑ってうなずく)「俺も」



