上司というワードは、自分に向けて唱えていた。
「主任は不倫してないし、セクハラされた側が罰せられるのはおかしいですよ」
「でも、私は声を上げられなかったから。責任が無いとは言えない」
(あの彼女も怖かったに違いない)
「頭撫でられる以外、何かされませんでしたか? 怖かったでしょう? 主任がそんな目に遭ってると気付かなくてすいません」
質問の声音が変わり、彼へ振り向く。西山君が謝る事じゃないが本気で心配されている。
「他は特に。部長も私を女性として見ていないと思う。あはは、当たり前だよね? 地味だし魅力ないもの」
薄っぺらい建て前など溶かしてしまう熱っぽい眼差しを注がれ、女としての自信のなさが露呈した。
「あなたを女性として見ている男を隣へ座らせて、その言い方は良くないです」
「西山君は怖くない」
「それは部下として? 男として?」
ウィンカーがたかれ、タクシーは停車する。先に彼が降りた。
「降りずに会社へ走らせててもいいっすよ。自分でも弱っている所へ付け込んでると分かってますから」
片手をルーフに乗せ、私のくっついたままの両足を確認しながら言う。
「彼女と鉢合わせたら気不味いよ」
我ながら往生際が悪い言い回しをしてしまい、西山君が襟足を掻く。
「あー、恋人は居るかって聞かれてましたね? いません、いてたまるか! 俺、どう考えても主任を口説いてますよね?」
「え、あ、うん」
「これってセクハラに該当します? 不快ですか? 迷惑?」
「それは」
そこは否定しようがないので首を横に振る。
といえ、運転手も発車しないといけない。付き合いきれないと言わんばかりの咳払いで押し出されるとーー抱き締められた。
「に、西山君!」
「あのまま帰られるんじゃないかって不安だった」
「あんなに口説いておいて?」
「必死です、余裕なんかないっす」
これほど大きな身体を不安にさせるのが私だなんて、信じられない。自然と背中に手を回し、存在を確かめていた。
「主任は不倫してないし、セクハラされた側が罰せられるのはおかしいですよ」
「でも、私は声を上げられなかったから。責任が無いとは言えない」
(あの彼女も怖かったに違いない)
「頭撫でられる以外、何かされませんでしたか? 怖かったでしょう? 主任がそんな目に遭ってると気付かなくてすいません」
質問の声音が変わり、彼へ振り向く。西山君が謝る事じゃないが本気で心配されている。
「他は特に。部長も私を女性として見ていないと思う。あはは、当たり前だよね? 地味だし魅力ないもの」
薄っぺらい建て前など溶かしてしまう熱っぽい眼差しを注がれ、女としての自信のなさが露呈した。
「あなたを女性として見ている男を隣へ座らせて、その言い方は良くないです」
「西山君は怖くない」
「それは部下として? 男として?」
ウィンカーがたかれ、タクシーは停車する。先に彼が降りた。
「降りずに会社へ走らせててもいいっすよ。自分でも弱っている所へ付け込んでると分かってますから」
片手をルーフに乗せ、私のくっついたままの両足を確認しながら言う。
「彼女と鉢合わせたら気不味いよ」
我ながら往生際が悪い言い回しをしてしまい、西山君が襟足を掻く。
「あー、恋人は居るかって聞かれてましたね? いません、いてたまるか! 俺、どう考えても主任を口説いてますよね?」
「え、あ、うん」
「これってセクハラに該当します? 不快ですか? 迷惑?」
「それは」
そこは否定しようがないので首を横に振る。
といえ、運転手も発車しないといけない。付き合いきれないと言わんばかりの咳払いで押し出されるとーー抱き締められた。
「に、西山君!」
「あのまま帰られるんじゃないかって不安だった」
「あんなに口説いておいて?」
「必死です、余裕なんかないっす」
これほど大きな身体を不安にさせるのが私だなんて、信じられない。自然と背中に手を回し、存在を確かめていた。

