「…あ〜、いいねぇ。『つかささま』。なんて甘美な響き…」
1人うっとりとしているつかささまに翠さまと遣都さまは冷ややかな視線を送ったかと思えば、わたしの方に向き直ると、
「お前、ナンパをしらねぇの?」
「キミってもしかして世間知らずのお嬢様だったりする?」
信じられないと言った表情で凝視された。
「えっ、あ…いえ。学校がずっと女子校だったもので。その、恋愛関係に疎くて…」
「え〜、すずチャンぐらい可愛かったら帰宅途中とか外で遊んでいる時とかにフツーに声掛けられそうだけどなぁ」
「あ…通学は車での送迎でしたし、習い事が多かったので、ご学友との外出とかもなくて…」
「…生粋(きっすい)のお嬢様なんだね」
「へぇ。じゃあまだ『なにも知らない』んだ?まっさらな女の子を自分色に染めていくのも一興、」
つかささまの『なにも知らない』という言葉で
先程の翠さまとの口づけが甦り、途端に身体が熱を持つ。


