「…ん、」
ゆっくりと意識が覚醒してきて、目を開けばそこに映ったのは見覚えのない部屋。
…ここ、どこ?…わたしは…
「っっ!!」
勢い良く上体を起こしたのと同時に昨日の記憶がありありと思い出された。
「…そうだった」
わたし、今日からこの家の家政婦になったんだった。
いま、何時!?
部屋をぐるりと見回せば、ドレッサーの上に壁掛け時計があり、ちょうど5時をさしている。
カーテンの隙間から漏れる陽の光を考えれば、朝の5時でまず間違いないだろう。
幼き頃より起床時間は毎朝5時だった。
今となっては皮肉なほど体内時計はキッチリしている。
口の端が少し引きつったが、気を取り直して重いカーテンをシャッと開け、明るくなった部屋で自分が持って来たタータンチェック柄の小さなキャリーケースを探す。
部屋の隅にそっと置かれているそれを見つけると素早く中身をチェックして着替えを済ませ、髪をザッと束ねると部屋を後にした。


