泣き疲れたすずをベッドに誘導すると、あっという間に眠ってしまった。

あんなキスを交わしたというのに俺に対する警戒心がまるでない様を見ると思わずため息が出てしまうが、今はまだこれでいいのかも知れない。

そう自身に言い聞かせてリビングに戻ると、俺のことを待っていたらしいふたりが詰め寄って来た。

「戻ってくるの遅かったね。今まですずチャンとなにしていたんだい?」

ニヤニヤなつかさ。

「翠っ!素性も知らないナンパしただけの女の子を住み込みの家政婦になんて、なに考えているのさっ!」

珍しく感情を露(あら)わにしている遣都。

「なにも。ずっと泣いていたから宥めていたら泣き疲れて寝たからここに戻って来ただけ。素性はこれから調べるけど、叩いてホコリが出てくる感じじゃないしな。深すぎる事情は抱えていそうだけど」

「確かに」

俺の答えにつかさはわざとらしいぐらいに何度も頷いた。

「っ、でも、だからって何も住み込みじゃなくたってっ、」

「まぁまぁ、遣都クン。もしかしたらこれを機に女嫌い治るかもよ?」

「大きなお世話だよっ」

「そ。大きなお世話」

「翠?」

「俺、すずのこと、本気だから」

ニヤリと笑めば、ふたりは信じられない言葉を聞いたかのように目を見開き何かを言っていたが聞く耳持たず、俺は「寝るわ」と一言だけいうと、寝る支度をしてとっとと部屋に入った。