「久しぶり、蒼」

直後、聞こえてきたのは青月が俺のことを呼ぶ声だった。
その綺麗で透明で、何の汚れのない声は昔と全く変わっていない。

刹那の沈黙。
周りの音が一瞬聞こえない。空気が凍りついたかのように動かない。

だが、その静けさは、一瞬のうちに再開された。


「な、なんで不良の隣に波野がいるんだ?」
「黒崎くんは怖いって噂だぞ。触ったら死ぬってさ」
「近寄るなって言われてるのに、あいつ大丈夫か?」

教室は周りの声に埋め尽くされた。
あいつ大丈夫か?という声に少しだけイラッとしたが、俺はなんでもない風を装って、窓の外に視線を映した。

そして、聞こえるか聞こえないかくらいの声量でつぶやいた。

「お前、相変わらずだな。」

青月の耳には俺の声が届いたみたいだ。

「そうだね。私、変わってない。」

少しだけ笑いの混ざった声が聞こえてきた。