ステージの向こうで、僕らは光になる

 三月末、卒業式の翌朝。
 ルミナステージの前には、柔らかい春の陽射しが差し込んでいた。
 桜の蕾がふくらみ始め、ほんの少しだけ花が開き始めている。
 「……もう、春だね」
 咲来が静かに呟く。
 「本当に、ここまで来たんだな」
 充がゆっくりと頷く。
 今日は、正式な文化資産指定の看板を掲げる日。
 市役所の担当者も、商店街の面々も、そして市民たちも大勢集まっていた。
 「準備、できたぞー!」
 健吾がやや涙声で叫ぶ。
 「最後のボルトを——」
 充が看板の最後の位置を確認し、インパクトドライバーを手に取る。
 カチン、と静かに回るドライバーの音が、やがて最後の一段階の締め付けでピタリと止まった。
 《ルミナステージ 文化資産保存指定》
 新しい看板が、朝日を浴びてきらりと輝く。
 周囲から自然に拍手が起こる。
 「よくやったなあ、あんたたち!」
 「まさか高校生にここまで任せられるとは思わなかったよ!」
 商店街の店主たちも笑顔で讃えている。
 充は一歩下がって仲間たちの方を振り返った。
 「本当に、みんなのおかげだ」
 「まだ終わりじゃないよ」
 祐貴がニヤリと笑う。
 「これからも新しい舞台作っていくんでしょ?」
 「うん!」



 咲来が一冊のノートを広げた。
 表紙には、銀色のペンでこう記されている。
 《新作脚本ノート》
 「……ここから先の物語は、まだ真っ白だね」
 咲来は微笑みながら、ゆっくりページをめくる。
 「でも、今ならどんな“光”も描けそうな気がするよ」
 紗季がパッと手を上げた。
 「私、新衣装アイデアもう三つ考えてあるよ!」
 凌太もギターケースを軽く叩く。
 「音も新しい試み、思いついてる」
 イヴァンは静かに頷き、シェイアンは少し照れながらも口を開いた。
 「僕は……もう少し迷いながら、でもまた舞台美術を描くよ」
 「次は私、スポンサー回りももっと上手くなる」
 知香がタブレットを掲げると、祐貴がにやりと笑う。
 「水に流す練習も、もう十分してきたしな」
 みんなが笑い声を上げたその瞬間——
 健吾が高く手を掲げた。
 「じゃあ、記念撮影、いこう!」
 準備されたカメラの前に全員が集まる。
 桜の蕾が風に揺れ、遠くから朝の光が差し込む中——
 カメラのシャッター音が静かに響いた。
 パシャリ。
 新しい物語の、最初の一枚が刻まれた。
(第40話「光になる日」執筆 End)