ステージの向こうで、僕らは光になる

 アンコールの手拍子が鳴り止まない。
 カーテンコールを終えて一度は舞台袖に下がったが、客席の手拍子は規則正しく続いていた。
 「……すごいな、これ……」
 凌太がイヤモニを外しながら呟いた。
 「自然発生的なアンコール、完全に予定外だよ」
 紗季も目を潤ませている。
 「どうする、充?」
 祐貴が小声で問いかけた。
 充は一瞬だけ考え——小さく微笑んだ。
 「行こう。もう一度、全員で」
 だがその時、舞台裏の隅に立っていたシェイアンがそっと一歩前に出た。
 「……僕、出てもいいかな」
 みんなが驚いて振り返る。
 「もちろんだよ」
 咲来が即答する。
 「でも、シェイアン、自分から出たいって言うの初めてじゃない?」
 紗季が目を丸くする。
 「今の僕は、ネガティブのままでも出ていける。だってそれも含めて僕の“足跡”だから」
 シェイアンは小さく息を吐き、イヴァンの肩に軽く手を置いた。
 「照明、頼むね」
 イヴァンは無言でうなずき、ポータブル照明ユニットを起動する。
 幕が再びゆっくりと開く。
 シェイアンが一人、静かに舞台中央に立つ。



 静まり返った会場に、シェイアンの声が響いた。
 「僕は、ずっと……完璧じゃなきゃ出ちゃいけないと思ってた」
 彼は少し間を置きながら、客席をゆっくり見渡す。
 「でも今は——そうじゃないって思える。揃わない光も、揺れる光も、全部が重なって、今日の舞台になった」
 イヴァンが照明を操作し、舞台全体が柔らかく七色の揺らぎに包まれる。
 その揺らめきは、客席にも広がり、まるで観客全員の表情が“光”として照らされていくようだった。
 「だから、ありがとう——僕は今、ここに立てている」
 ゆっくりとシェイアンが一礼した瞬間、会場は再び大きな拍手に包まれた。
 そして、イヴァンが最後の演出を起動する。
 客席全体に配置されていた小型の反射ミラーが一斉に作動し、観客一人ひとりが小さな星のように輝き始める。
 「わっ……!」
 「私たちが光になってる……!」
 驚きと歓声が自然と巻き起こる。
 「光は、観る人の心が決める」
 咲来が袖から小さく呟いた。
 ルミナステージ全体が、観客を含めた“ひとつの星空”になっていた。
 それは、この一年間のすべての足跡が生み出した、奇跡のフィナーレだった。
(第39話「残響のアンコール」執筆 End)