ステージの向こうで、僕らは光になる

 三月上旬、清栄高校資料室。
 ホワイトボードには大きく書かれていた。
 《残席:800 → 0 》
 「よし、作戦会議を始める!」
 充が指揮を執り、全員が真剣な表情で揃っていた。
 「満席まで、あとひと月。今までは流れに任せた部分もあったけど、ここからは本気の集客戦略でいく!」
 「どんな手でも使うよ!」
 紗季が気合十分に拳を突き上げる。
 「倫子、まずは例の“謎解き広告”から説明して」
 「了解!」
 倫子はホワイトボードに新たな図を描いた。
 「街中に散りばめた“物語の伏線ポスター”を設置する。QRコードを読み取ると、各キャラクターの謎めいた短編ストーリーが開く仕掛けにするんだ。徐々に全容が見えてくる構成にしてある」
 「なるほど……まるで公演そのものが、既に始まっている感覚になるってわけか」
 祐貴がうなずく。
 「次は知香のシステム担当!」
 「はーい!」
 知香はタブレットを立ち上げた。
 「チケット管理は完全QR化します。予約状況はリアルタイムで更新。SNS連携も強化して、商店街各店舗でもコードから即予約可能にする」
 「これなら商店街のお客さんもその場で申し込めるね!」
 紗季が嬉しそうに頷く。
 「さらに——」
 咲来がふわりと手を挙げた。
 「フラッシュモブの仕込み、紗季と準備済みだよ」
 「ええ!? 本当にやるの!?」
 「もちろん!」
 紗季がにっこり笑う。
 「街中の広場でいきなり短編パフォーマンスやって、観客をそのままチケット申込みに流す作戦!」
 「わー、派手だけど効果は高そうだな」
 凌太が笑う。
 「よし! “座席を埋めろ作戦”全方位展開だ!」
 充が拳を握ると、全員の顔に熱い闘志が宿った。



 翌日から街中での動きが一気に活発化した。
 商店街の軒先には、次々とカラフルなポスターが貼り出されていく。ポスター中央には大きなQRコードと、謎めいたキャッチコピー。
 《「光は、揃わなくても輝く」——その意味を知りたいなら。》
 通りすがりの客が次々とスマホをかざし、QRコードを読み取っていく。
 「あれ? これ……高校生たちの劇場再生の話じゃない?」
 「へえ、続きがネットで読めるんだ」
 「何これ面白そう! 行ってみようかな」
 市民の間で少しずつ話題が広がっていく。
 一方その裏で、紗季と咲来は大胆な仕掛けを実行していた。
 ——駅前広場。
 BGMが突然流れ出すと、紗季たちが次々と踊りながら現れた。衣装はもちろん光ファイバー仕様だ。道行く人々が驚いて立ち止まる。
 「すごい! 何あれ!? 衣装光ってる!」
 「本物の劇場みたいだ……」
 フラッシュモブが終わると同時に、祐貴が颯爽と登場。
 「本日の公演は“予告編”です! ぜひ本編にお越しください!」
 即席の申込みカウンターがその場に設けられ、QRコードを提示して即時予約が可能となっていた。
 「やるなあ……」
 商店街の古株たちもその様子を遠目に眺めながら感心する。
 「まさに今どきの商売だな」
 「これで満席も夢じゃないかもな」
 こうして街全体が静かに、しかし確実に“最後の舞台”に向けて熱気を帯び始めていった。
 満席まで、残り——あとわずか。
(第33話「座席を埋めろ作戦」執筆 End)