二月下旬、市役所議場ロビー。
ついにこの日がやってきた。
議会本会議を前に、特別公開パフォーマンスの場が設けられていた。議員たちの最終判断を左右する“公開試演”である。
「さて——準備は万全だよな」
祐貴が司会台の横に立ち、全体のタイムテーブルを確認している。
「いつでもいける」
充が深く頷く。
議場ロビーには、議員たちだけでなく、商店街の関係者、市民有志、報道陣まで集まっていた。中には冬遠征の活躍を知っている市民の顔も多く、客席はすでに温かい空気に包まれていた。
「みんな、緊張してる?」
咲来が優しく声をかけると、健吾が早速うるうるし始めた。
「ここで泣くな健吾!」
紗季が慌てて突っ込む。
「よーし、じゃあ行くぞ!」
凌太がイヤモニを確認しながら叫んだ。
第一幕、開演。
ステージ中央には紗季とシェイアンが用意した簡易美術セットが組まれている。イヴァンが最新のポータブル照明を起動し、天井を星空のように浮かび上がらせた。
「すげえ……これ議場のロビーだよな?」
「なんで天井が星空に……?」
議員たちもざわめく。
舞台中央に咲来が立ち、静かに朗読を始めた。
「ここは——光を生む場所。
過去の欠片が重なり、未来の欠片が芽吹く場所」
バックに流れるBGMは、凌太が完成させた《Pleiades of Lights》の冒頭部分。七人の心音が混ざり合い、微細に揺れるリズムが場内に広がっていく。
「“揺らぎ”そのものが、私たちの証明です」
シェイアンの手が動き、美術セット内の光ファイバーがゆるやかに波打つ。議場の中が、静かに感動の渦に包まれていった。
朗読が続く中、照明がゆっくりと動き、議場全体がまるで星の海に包まれたようになっていく。
イヴァンの照明プログラムは、議場ロビーの高い天井に幾何学的な星座模様を投影していた。市章とシンクロさせた演出に、議員たちの視線が次々と吸い込まれていく。
「こ、こんな空間演出……」
「市民会館の設備じゃ不可能だぞ?」
驚きのささやきが議場のあちこちから漏れる。
次に紗季がダンサーたちを率いて登場。彼女たちの衣装は、例の迷路状の光ファイバー衣装。緩やかに呼吸するように七色に揺らめくその光は、観客の目を完全に奪っていた。
「わあ……本当に、揺れてる……!」
紗季自身が踊りながらも、衣装の変化に感動していた。
そして凌太が舞台袖から演奏に加わり、曲はクライマックスに向けて一気に盛り上がる。
「この重なり合う心拍……これが俺たちの“今”だ!」
楽曲内で録音された七人の心音が波のように押し寄せ、時に重なり、時にズレながら、奇跡的なハーモニーを生み出していく。
最後のセリフ——咲来が一歩前に出て、ゆっくりと語る。
「——光は揃わなくても、輝く。」
その瞬間、会場内の照明が全て消え、イヴァンが用意した特殊反射ミラーが天井の星空模様を客席に向けてゆっくりと反転させた。
星空が——議員たち自身を照らし始めた。
まるで、観客一人ひとりが“舞台の光”に包まれているようだった。
議場が静まり返ったまま、長い長い静寂のあと——
「……素晴らしい……!」
誰かの拍手を皮切りに、議場全体が一斉にスタンディングオベーションになった。
(第31話「最終審査・公開パフォーマンス」執筆 End)
ついにこの日がやってきた。
議会本会議を前に、特別公開パフォーマンスの場が設けられていた。議員たちの最終判断を左右する“公開試演”である。
「さて——準備は万全だよな」
祐貴が司会台の横に立ち、全体のタイムテーブルを確認している。
「いつでもいける」
充が深く頷く。
議場ロビーには、議員たちだけでなく、商店街の関係者、市民有志、報道陣まで集まっていた。中には冬遠征の活躍を知っている市民の顔も多く、客席はすでに温かい空気に包まれていた。
「みんな、緊張してる?」
咲来が優しく声をかけると、健吾が早速うるうるし始めた。
「ここで泣くな健吾!」
紗季が慌てて突っ込む。
「よーし、じゃあ行くぞ!」
凌太がイヤモニを確認しながら叫んだ。
第一幕、開演。
ステージ中央には紗季とシェイアンが用意した簡易美術セットが組まれている。イヴァンが最新のポータブル照明を起動し、天井を星空のように浮かび上がらせた。
「すげえ……これ議場のロビーだよな?」
「なんで天井が星空に……?」
議員たちもざわめく。
舞台中央に咲来が立ち、静かに朗読を始めた。
「ここは——光を生む場所。
過去の欠片が重なり、未来の欠片が芽吹く場所」
バックに流れるBGMは、凌太が完成させた《Pleiades of Lights》の冒頭部分。七人の心音が混ざり合い、微細に揺れるリズムが場内に広がっていく。
「“揺らぎ”そのものが、私たちの証明です」
シェイアンの手が動き、美術セット内の光ファイバーがゆるやかに波打つ。議場の中が、静かに感動の渦に包まれていった。
朗読が続く中、照明がゆっくりと動き、議場全体がまるで星の海に包まれたようになっていく。
イヴァンの照明プログラムは、議場ロビーの高い天井に幾何学的な星座模様を投影していた。市章とシンクロさせた演出に、議員たちの視線が次々と吸い込まれていく。
「こ、こんな空間演出……」
「市民会館の設備じゃ不可能だぞ?」
驚きのささやきが議場のあちこちから漏れる。
次に紗季がダンサーたちを率いて登場。彼女たちの衣装は、例の迷路状の光ファイバー衣装。緩やかに呼吸するように七色に揺らめくその光は、観客の目を完全に奪っていた。
「わあ……本当に、揺れてる……!」
紗季自身が踊りながらも、衣装の変化に感動していた。
そして凌太が舞台袖から演奏に加わり、曲はクライマックスに向けて一気に盛り上がる。
「この重なり合う心拍……これが俺たちの“今”だ!」
楽曲内で録音された七人の心音が波のように押し寄せ、時に重なり、時にズレながら、奇跡的なハーモニーを生み出していく。
最後のセリフ——咲来が一歩前に出て、ゆっくりと語る。
「——光は揃わなくても、輝く。」
その瞬間、会場内の照明が全て消え、イヴァンが用意した特殊反射ミラーが天井の星空模様を客席に向けてゆっくりと反転させた。
星空が——議員たち自身を照らし始めた。
まるで、観客一人ひとりが“舞台の光”に包まれているようだった。
議場が静まり返ったまま、長い長い静寂のあと——
「……素晴らしい……!」
誰かの拍手を皮切りに、議場全体が一斉にスタンディングオベーションになった。
(第31話「最終審査・公開パフォーマンス」執筆 End)



