プレ公演から数日後——。
 八月初旬、川辺のバーベキュー場に仲間たちが集まっていた。梅雨明けの青空はまぶしく、蝉の声が容赦なく響いている。
 「さて、今日は反省会……いや、リスタート会議だ!」
 凌太が炭火を起こしながら宣言すると、全員が苦笑いで応えた。実際、この数日間は誰もが言葉に詰まる日々だった。失敗の空気を一度リセットするために、凌太と祐貴が企画した"慰労バーベキュー"だった。
 「まずは肉だ! 反省は肉の後!」
 凌太が豪快に肉を並べる。ジュウウウ……と煙が立ち上がり、次第に皆の表情も緩んでいく。
 「うわ、いい匂い〜!」
 紗季が目を輝かせ、シェイアンが静かに串を並べる。イヴァンは黙々と網の高さを微調整している。細かい作業は彼の得意分野だ。
 祐貴が缶ジュースを配りながら、静かに口を開いた。
 「ま、あの日は確かに失敗だった。でも、失敗の中で見えたものもあったろ?」
 咲来がゆっくり頷く。
 「紗季が即興で旗を振ったとき、私、本当に鳥肌立ったよ。台本にないアドリブが、逆に観客の心に届いたかもしれないって思った」
 「お客さんの一部は残って拍手もしてくれてた」
 健吾が、少し涙ぐみながらも微笑んだ。
 「うん……確かに、悔しいけど、ゼロじゃなかった」
 知香がデータを取り出す。
 「簡易アンケート集計では、予想外に“また観たい”って声も一定数あったのよ」
 「そのリアルな数字が一番ありがたいわ」
 祐貴が満足げに頷く。
 「……だけど、同じ失敗は二度できないよね」
 紗季が真剣な表情で言った。
 「だからこそ次に向けて、どう進化させるかだ」
 充がゆっくりと全員を見渡した。
 「もう一度、脚本も演出も練り直そう。今度は“予定通りの成功”じゃなく、“どんな状況でも光れる舞台”を目指そう」
 その言葉に、皆の目が再び輝き始める。