七月下旬。夏の夕暮れ、ルミナステージには蒸し暑さを含んだ微風が流れていた。
充たちは明日の公開リハーサル、いわゆる「サマー・プレ公演」の準備に追われていた。ここ数週間の集大成が、この一夜に詰め込まれていた。
「オーケー、音響チェック、照明チェック——イヴァン、どう?」
「機材異常なし。全部、予定通り稼働する」
イヴァンは控えめに淡々と答え、照明タワーを見上げた。シェイアンが隣で舞台の美術セットを微調整している。巨大な布幕には淡い光のグラデーションが描かれ、まるで日の出前の空のようだった。
「舞台袖の導線確認も終わりました。小道具の配置も完了です」
知香がタブレットを片手に進行表を確認する。祐貴はその後ろで悠々と腕を組んでいる。
「ま、あとは本番通りに流してみるだけだな」
「……なんか緊張してきた」
紗季がソワソワと衣装ラックの前を行ったり来たりしていた。
「落ち着け、紗季。明日はまだ本番じゃない。公開リハってだけだ」
凌太が笑いながら肩を叩く。だがその凌太の表情もどこか張り詰めている。
「でもさ……失敗したら?」
紗季が小声で言った瞬間だった。
——ゴォォォォォ……
突然、突風が吹き抜けた。舞台上の布幕が大きく膨らみ、支柱がギシギシと悲鳴を上げた。
「うわっ!? イヴァン!」
「危ない——!」
イヴァンが咄嗟に支柱の固定具に駆け寄ったが、その時、照明リフトの一台がグラリと揺れた。
「落ちる!」
凌太が叫んだ。
次の瞬間——
ガシャーン!
ステージ脇に設置してあった予備の小型照明が鉄骨に当たって落下した。幸い誰にも当たらなかったが、床に散らばった破片が衝撃の大きさを物語っていた。
全員が凍りつく。
「……嘘でしょ……」
紗季が青ざめて呟く。
「ごめん……私、今日の吊り直しでロープの固定、ちゃんと確認したと思ったんだけど……!」
慌てて謝る紗季。充が慌てて駆け寄った。
「大丈夫だ、怪我は誰もしてない。落ち着け。事故じゃない、ヒヤリハットだ。原因を洗おう」
イヴァンも静かにうなずいた。
「ロープの素材が劣化してた。見えないヒビが入ってたかもしれない」
「でも……これ、明日までに修理間に合うの?」
紗季の声が震えた。
充たちは明日の公開リハーサル、いわゆる「サマー・プレ公演」の準備に追われていた。ここ数週間の集大成が、この一夜に詰め込まれていた。
「オーケー、音響チェック、照明チェック——イヴァン、どう?」
「機材異常なし。全部、予定通り稼働する」
イヴァンは控えめに淡々と答え、照明タワーを見上げた。シェイアンが隣で舞台の美術セットを微調整している。巨大な布幕には淡い光のグラデーションが描かれ、まるで日の出前の空のようだった。
「舞台袖の導線確認も終わりました。小道具の配置も完了です」
知香がタブレットを片手に進行表を確認する。祐貴はその後ろで悠々と腕を組んでいる。
「ま、あとは本番通りに流してみるだけだな」
「……なんか緊張してきた」
紗季がソワソワと衣装ラックの前を行ったり来たりしていた。
「落ち着け、紗季。明日はまだ本番じゃない。公開リハってだけだ」
凌太が笑いながら肩を叩く。だがその凌太の表情もどこか張り詰めている。
「でもさ……失敗したら?」
紗季が小声で言った瞬間だった。
——ゴォォォォォ……
突然、突風が吹き抜けた。舞台上の布幕が大きく膨らみ、支柱がギシギシと悲鳴を上げた。
「うわっ!? イヴァン!」
「危ない——!」
イヴァンが咄嗟に支柱の固定具に駆け寄ったが、その時、照明リフトの一台がグラリと揺れた。
「落ちる!」
凌太が叫んだ。
次の瞬間——
ガシャーン!
ステージ脇に設置してあった予備の小型照明が鉄骨に当たって落下した。幸い誰にも当たらなかったが、床に散らばった破片が衝撃の大きさを物語っていた。
全員が凍りつく。
「……嘘でしょ……」
紗季が青ざめて呟く。
「ごめん……私、今日の吊り直しでロープの固定、ちゃんと確認したと思ったんだけど……!」
慌てて謝る紗季。充が慌てて駆け寄った。
「大丈夫だ、怪我は誰もしてない。落ち着け。事故じゃない、ヒヤリハットだ。原因を洗おう」
イヴァンも静かにうなずいた。
「ロープの素材が劣化してた。見えないヒビが入ってたかもしれない」
「でも……これ、明日までに修理間に合うの?」
紗季の声が震えた。



