白坂議員は少し間を置いてから、手元の進行表を静かに指で叩いた。
「しかし……半年でこれだけの準備を進めるとなると、相当な負担だろう。資金も、天候リスクも——保険は?」
ズバリと現実的な問題を突いてくる。議員たちもざわめき始めた。
祐貴がさっと前に出る。
「はい。進行リスクに対してはすでに予備プランを数段階用意してあります。市民協賛は現在二次交渉中ですが、必要最低限の予算ラインは現時点でも確保可能です。現実的なラインで、責任は私、生徒会外交担当の水城が管理いたします」
冷静で滑らかな説明。まるで長年の交渉経験者のようだ。議員たちがまた顔を見合わせる。
「加えて」と祐貴が続けた。
「今回の劇場再生は、単なる学生の課外活動ではなく、地域文化資産の活用モデルとして市内外のメディアにも取材されつつあります。文化課担当者とも調整中ですが、うまく育てば観光誘致や商店街活性にも波及します」
「おお……ずいぶんと話が大きく出たな」
白坂議員が半ば呆れたように笑う。だがその口調は、もはや否定ではなく興味を持ち始めている色だった。
「なるほど。若い者にしては……よくここまで練ってある。情熱だけではなく、現実の足場も見ているようだ」
後方に控えていた文化課の職員が小さく頷くのも見えた。
「一次審査はあくまで中間評価だが——」白坂議員はゆっくりと告げた。
「保留とする。最終決定は秋の本会議で出すが、それまでに実際の公演と、具体的成果を見せてもらう。よろしいな?」
その瞬間、充は深々と頭を下げた。
「……はい! 必ずお見せします!」
健吾も、涙を浮かべたまま必死に頭を下げる。
「よろしくお願いいたします……!」
議員たちが散っていき、静けさを取り戻したロビーに、ようやく安堵の空気が戻った。
「……ふ、ふうう……」
健吾が座り込みそうになり、すかさず紗季が支えた。
「お疲れ様! すごかったよ、健吾くん」
「だ、だって、緊張しすぎて何言ったか覚えてない……」
「それでもちゃんと心に届いたんだよ」
咲来が優しく言う。
「泣きの健吾、やっぱ最強だな」
凌太が冗談めかして言うと、みんながどっと笑った。
「……でも、まだ仮承認。次は結果を出さないと意味がない」
知香が冷静に引き締めると、全員が自然に頷いた。
「文化祭だな……ここからが本当の勝負だ」
充が静かに呟く。その言葉は、皆の胸にしっかりと刻まれた。
(第7話「涙のプレゼンテーション」執筆 End)
「しかし……半年でこれだけの準備を進めるとなると、相当な負担だろう。資金も、天候リスクも——保険は?」
ズバリと現実的な問題を突いてくる。議員たちもざわめき始めた。
祐貴がさっと前に出る。
「はい。進行リスクに対してはすでに予備プランを数段階用意してあります。市民協賛は現在二次交渉中ですが、必要最低限の予算ラインは現時点でも確保可能です。現実的なラインで、責任は私、生徒会外交担当の水城が管理いたします」
冷静で滑らかな説明。まるで長年の交渉経験者のようだ。議員たちがまた顔を見合わせる。
「加えて」と祐貴が続けた。
「今回の劇場再生は、単なる学生の課外活動ではなく、地域文化資産の活用モデルとして市内外のメディアにも取材されつつあります。文化課担当者とも調整中ですが、うまく育てば観光誘致や商店街活性にも波及します」
「おお……ずいぶんと話が大きく出たな」
白坂議員が半ば呆れたように笑う。だがその口調は、もはや否定ではなく興味を持ち始めている色だった。
「なるほど。若い者にしては……よくここまで練ってある。情熱だけではなく、現実の足場も見ているようだ」
後方に控えていた文化課の職員が小さく頷くのも見えた。
「一次審査はあくまで中間評価だが——」白坂議員はゆっくりと告げた。
「保留とする。最終決定は秋の本会議で出すが、それまでに実際の公演と、具体的成果を見せてもらう。よろしいな?」
その瞬間、充は深々と頭を下げた。
「……はい! 必ずお見せします!」
健吾も、涙を浮かべたまま必死に頭を下げる。
「よろしくお願いいたします……!」
議員たちが散っていき、静けさを取り戻したロビーに、ようやく安堵の空気が戻った。
「……ふ、ふうう……」
健吾が座り込みそうになり、すかさず紗季が支えた。
「お疲れ様! すごかったよ、健吾くん」
「だ、だって、緊張しすぎて何言ったか覚えてない……」
「それでもちゃんと心に届いたんだよ」
咲来が優しく言う。
「泣きの健吾、やっぱ最強だな」
凌太が冗談めかして言うと、みんながどっと笑った。
「……でも、まだ仮承認。次は結果を出さないと意味がない」
知香が冷静に引き締めると、全員が自然に頷いた。
「文化祭だな……ここからが本当の勝負だ」
充が静かに呟く。その言葉は、皆の胸にしっかりと刻まれた。
(第7話「涙のプレゼンテーション」執筆 End)



