「いらっしゃいませ〜」

いつもの店長の優しい声で迎えられるのが好きだった。

年齢は知らないが多分三十代前半くらいの男性の店長さんで、元々コーヒーが大好きでこの店を始めたらしい。

何度も通ううちにいつも頼むメニューを覚えて貰えるくらいには仲良くなった。

「茅音ちゃん、今日も資格の勉強?」

「はい。えっと……今日はどれを頼もうかな」

「いつものコーヒーは?」

「コーヒーは頼む予定なんですけれど、今日は甘いものも食べたくて」

「ああ、それなら新作のオレンジを使ったチョコケーキが出てるよ。もし良かったら……」

「それにします!」

私の食い気味の返答に店長さんが「そんなに嬉しそうに頼んでくれたら妻が喜ぶよ」と笑っている。

このカフェは飲み物は店長さんが担当で、デザートや軽食は店長の奥さんが担当している。