彼の秘密は、溺愛付き。

カフェの店前まで来て、もう一度時計を確認する。

やはり中に入る時間はなさそうだった。

カフェの中にも入らず、店の前に来ただけ。

普通だったら「何しに行ったんだ」とツッコミが飛んできそうな行動。

自分でも馬鹿みたいだと思うけれど、もう私にとってこのカフェはそれ位大事な場所になっていた。


「よし、頑張ってきます」


歩道を歩いている誰にも聞こえないくらいの声量で、そう宣言する。

そのまま試験会場に向かおうと後ろを振り返った私に誰かが声をかける。


「平塚さん！」


その名前を呼ぶ声だけで、誰だか分かってしまう。

「店の中から平塚さんが見えて。今から試験会場？」

「うん、頑張ってくる！」

何故か無駄に三原くんに「頑張ってくる！」と宣言したのに、三原くんは嬉しそうに「応援してる！」と返してくれた。