彼の秘密は、溺愛付き。

そのままキッチンに戻ると思ったのに、立ち上がった三原くんは何故か座っている私に少しだけ近づいた。

キッチンに向かうと思っていた三原くんが近づいただけで、私の身体は緊張して上手く動いてくれなくなる。

そんな私の頭を三原くんがポンっと右手で軽く叩いた。







「無理だけはしないこと」







小さくそれだけ言ってキッチンに戻って行ってしまう。

触れたのはほんの一瞬だけ。

会社でボールペンを拾った時より短かったかもしれないと思うほどの時間。

それでも、先ほどの告白の後では破壊力は倍ほど違う気がしてしまう。

私は手で覆うように顔を隠した。

「うう、慣れていないのに……」

三原くんはもういないのに、誰にも聞こえないほどの声量でそう呟いてしまう。

今更抵抗しても、もう三原くんの溺愛からは逃げられないのに。