白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



 正直に答えれば、赤髪の妖が「手前ぇ……」と唸りながらまた攻撃を放とうとする。が、狗神はそれを再び止めた。


「面白い。あの夜は戦う理由が無かったから見逃したが、そちらがそのつもりなら相手になってやろう」

「おい主、何を……」

「刀を使う陰陽師などそうお目にかかれるものではない。閏、お前は手を出すな」


 赤髪の妖が不満げに黙ったのを合図に、紫陽は大きく一歩踏み込んだ。

 紫陽は強く地面を蹴り、相も変わらず余裕そうに腕を組む狗神に斬りかかった。


(この男を倒せば、私は陰陽師として認めてもらえる)


 しかし、勇んで繰り出した斬撃を、狗神はトンと軽く下がるだけであっさりとかわした。


(……なんて、おめでたく考えられる状況ではないわね。やっぱり、まるで勝てる未来が見えない)


 ここに来るまでの旅と、赤髪の妖との戦いで体力を消耗している……などというのは言い訳だ。たとえ万全の状態だったとしても、これを祓うどころか傷を負わせることすらままならなかったのだろう。彼の長く美しい白銀色の髪一本切り落とすことさえできる気配がなかった。


 そのまま体勢を立て直し二度三度と剣を振るうも、そのたびに軽い身のこなしで避けられる。彼にとっては子どもと遊んでいるのと大差ない様子だ。


「速いな。そして目が良い。狙いが正確だ」

「っ……!」

「だが」