最恐の狗神様は、笑わない少女陰陽師を恋う。




 なるほど、それならわからなくもない。

 父も同意見らしい。大きくうなずいて母の言葉を継いだ。


「周囲との交流を好まず派手な行動をしない……というのも物は言いようだな。強さを周囲に誇示できないということはすなわち、狗神は五大妖の中では最も弱いというだけのこと。我々陰陽師の存在は目の上のたんこぶなのだろう」


 一度大きくため息をついた父は、まっすぐ紫陽のことを見つめる。

 親の顔をこんな風に近くでまっすぐ見たのはいつぶりだろう。彼らの目には、前からこんな黒い光が宿っていただろうか。


「だが、そうは言っても狗神の力が未知数なのも事実。下手に断って怨みを買っても良いことはない。だから分かるな?」


 紫陽は小さく息を吐いて、止めた。

 ここまで言われてわからないはずがない。


「狗神に嫁ぎなさい、紫陽」


 決定事項。拒否することなど認めない。父は口にこそ出さないが、そんなこと言われずともわかった。



「狗神が貴女を指名したのは幸いだったわ。もしこれが綾目だったらとても行かせられないもの」