そう言われても、綾目から話を聞いてすぐここに飛んできた。だがその言い訳を口にしようものならさらに怒鳴られるのは目に見えているので素直に謝罪だけしておくのが得策だ。
「本当、少しは綾目を見習おうという気概がないのかしら」
父の後ろには母親の姿もあった。母は扇で口元を隠し、紫陽に蔑んだ目を向ける。
紫陽はもう一度「申し訳ございません」と頭を下げる。それで二人は一応溜飲を下げてくれたようだ。
「まあいい。そこに座れ」
「はい」
これ以上怒鳴られることは無さそうだとわかり、ようやく少しほっとする。
脇息に肘をかけた父は、眉間の皺を深く刻んだまま紫陽に問いかけた。
「紫陽。お前は当然“五大妖”について知っているな?」
「五大妖」
いったい何の話が始まるのか。疑問に思いながらも、紫陽はその言葉を繰り返しながら記憶をたどる。
「妖たちを統率する、いわば王のような存在。最恐と名高い五人の妖──土蜘蛛、九尾狐、烏天狗、狗神、ぬらりひょん……のことですね」
「ああ」



