そして、尊都の誕生日当日。
私は、二週間前くらいに行ったデートで買ってくれたコーディネート一式を身に纏って尊都の部屋の前に来ていた。
今日は、いつもの100倍幸せを返せるように勇気を出してみよう、そうしよう。
いつもは尊都が私の部屋に来るけれど、今日は私がおもてなしする日。
使用人さんたちにも協力してもらい、今日のご飯はすべて私が計画し私が作ったもの。
ちゃんと雅さんと私リサーチの尊都の好物でまとめた。
これで喜ばなかったらきっとそれは尊都の偽物だ。
「……よし」
気合いを入れて、準備オッケー。
私は扉をノックした。
「…………」
返事は聞こえてこない。
一応ノックはしたが、ここまでは事前に言われていたことだ。
尊都からは、「誕生日の朝は俺を起こしてほしい」と言われている。
きっと、まだ寝ているだろう。
「……レッツゴー、女は度胸」
いつだって私は度胸と根性で生きている。
きっと今回も大丈夫だ。
私はそうっと扉を開けて、尊都の部屋に入った。
恋人になってもうすぐ一年だが、何気に尊都の部屋に入るのは初めてだ。
見回すと、部屋は私と同じくらいの広さだが、机と椅子、ベッド、タンスとクローゼット、本棚、ベッドなど最低限の家具しかないみたい。
その家具もことごとくモノクロの無地に統一されており、尊都らしいなあと感じてしまった。
私の部屋には初めからあれだけ揃ってたのに。
「…………」
尊都は、気持ちよさそうに眠っている。
私はせっかくの機会なので、遠慮なく尊都の顔をじいっと見つめた。
うわ、まつげバサバサ。ながっ。
唇に潤いありすぎじゃない?今はいいけど、前の私は乾いた湖の底みたいな唇だったよ。これで何もしてないって本当に?
っていうか肌綺麗……きめ細やか……。
顔のバランスとか黄金比通り越してプラチナ比って感じ。
はあ、綺麗……。こういうとこ見ると、いまだに私がこんな人と恋人なんかって思っちゃう。
でも本当の本当に恋人だ。毎日幸せに生きてるし、尊都からはたくさんの愛を感じる。
だからこそ、今日は尊都にしっかりと感謝の気持ちを伝えないとね。
「……」
私は、そっと屈んで尊都の美しい寝顔を間近で見つめる。
そして、尊都の綺麗な唇に自分から口付けた。
「……尊都」
「……んー?」
「おはよう。それから、誕生日おめでとう」
これが正真正銘の、目覚めのキス。
寝てる状態からだったら恥ずかしくなくていいね。
私は少し眠そうな尊都の寝ぼけ眼を見つめながらそんなことを考えた。
それにしても、起きたばっかの尊都って色気すごいな。
これが朝チュンか。朝に雀がちゅんちゅんってやつか。綺麗だなあ。
そしてしばらくして頭が冴えてきたのか、尊都は私を寝転んだままぎゅーっと抱きしめ「おはよう」と言ってきた。
「はあ、いい朝。毎日これで起こしてほしいくらい」
「ま、毎日⁉︎」
毎日は私の心臓がもたない。
だから、特別な日だけなら大丈夫……のはず。たぶん。
「と、とにかく起きて、尊都。朝ごはん作って持ってきたの」
「ほんと?朝から幸せづくしだね。じゃあ起きる」
尊都は嬉しそうに目を細めた後、そう言って起き上がった。
はだけたパジャマの間から漏れ出る光のような色気から目を逸らしつつ、私は部屋の外からワゴンを持ってきて、尊都と手作り朝食を楽しんだのだった。
スープは尊都にあーんしたりとか、全部美味しいと言いながら噛み締めて食べてくれるところを見たりとか、朝食だけでも楽しくて幸せになってしまった。
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