今夜、星影を溶かして【完】


その空間には、緊張感が満ちていた。



そしてその場で密やかに取引を交わしていた私たちは、とある約束を交わして握手した。




「よし、取引成立だ――抜かるなよ、刹菜」



「もちろんです、黒葉さん」




そう、私たちは手を組んでいる。



なぜかというと、来るべき4月18日――尊都さんの誕生日に、尊都さんを喜ばせるために。



取引内容は簡単だ。



私たちは、尊都さんを誕生日にとっても喜ばせたい。



だから私は、昌之を倒すのに協力した報酬である「給料」の残りでプレゼントを買う。



だが何を買ったかバレないように、黒葉さんにお金を払い、黒葉さんがプライベートで買う手筈だ。



黒葉さんも黒葉さんで、私にとあるお願いをしていた。



それは、尊都さんに4月18日を空けさせるというミッションだ。



今まで、尊都さんは誕生日に休日を作ったことがないという。



自分の生まれた日に興味がないらしいが、今年こそ祝ってやりたい、だそうで。



私が尊都さんに「空けて♡」とおねだりする役目を仰せつかった。




「プレゼントはもう決めたのか?」



「実は、それも相談したくて。ピアスかペンだったら、どっちがいいと思いますか?」




プレゼントについては、前々から考えてはいた。



だから考えているのは、いつでも身につけられるものであるピアスか、書類整理とかに使えそうなペン。



でも体に穴を開けるのが嫌いだったりペンにこだわりがあったりしてはいけないので、こうして相談したというわけだ。




「あー。別にどっちでもいいような気がすんなあ。どっちも絶対喜ぶし、どっちもこだわりとかないし」



「そうでしたか。それじゃあピアスにします」




ペンとなると、尊都さんは太い方が好きとか細い方とか、ペン先は何ミリとか、いろいろ知りたいことが多すぎる。



黒葉さんでも知れることと知ることができないことがあるだろうし。



それなら、私1人で選べるピアスの方がいいだろう。



それに、個人的な理由だけど、トイレで鏡を見たときとか、小さな日常の中で私のことを思い出してほしい。



ペンは、書類整理のときしか見られないから。



ということで、私は「ピアスならこれかな」と思っていたピアスを黒葉さんにお願いしてからその場を去った。