今夜、星影を溶かして【完】



「刹菜、今日、彼氏は?」



「はい、来ます!!」



「よっしゃあ気合い入れてこ!!!」




7月といえば私の誕生日があったけれど。



もう一つ大きなイベントがあることも、忘れてはならないだろう。




「文化祭でも彼氏のハート射止めてくよ刹菜!!」



「はい!!」




文化祭だ。



そうそう、みっちーを含むみんなに、「想い人」と恋人になったことを報告した。



ついでにキッカケが体育祭だったことも伝えれば、嬉しさに咽び泣きそうな顔をしていた。



本当に友人さまさまだよ。頭が上がらない。



そして今日も、尊都さんは文化祭にやってくる。



私の要望に応えて、来賓としてスーツではなく、普通の来場客としてラフな格好で来てくれるらしい。



だから私も、気合を入れないと。




「メイク、刹菜自分でやってきた⁉︎めっちゃかわいいんだけど!」



「ほんと⁉︎そうなの、実は動画見てやってみた!」




メイク道具は、パーソナルカラー?とかで選ばなきゃいけなかったからちょっと悩んだけど、尊都さんが一通り揃えてくれているおかげで困ることはなかった。



だからいろいろなサイトとか動画を見て使うメイク道具を決め、かわいいけど盛りすぎないガーリーなスクールメイクを試してみた。




「んー、でも文化祭だし、アイシャドウと顔まわりもっとやってもいいかも。唇もちゅるちゅる系塗ってみない?」



「ぜひ!ぜひお願いします!!」




なにしろ、体育祭のときのメイクも尊都さんに好評だったのだ。



そのうちみんなにメイク教えてもらいたいな、と思いながら頷く。



そしたら、みんなは体育祭のようにメイク道具という名のチャカを手に、髪やら顔やらをいじり始めてくれた。







「はーい刹菜ちゃん、こっち向いて!」



「んー完璧。刹菜ちゃんかわいすぎでしょ!」



「ハート作ってハート。んあーかわいい!」




みんなにベタ褒めしてもらいながら、私はチラリと近くの全身鏡を見た。



髪は、リボンを入れた三つ編みがところどころにある、髪を降ろしたスタイル。



オーソドックスなホワイトブリムのカチューシャをつけており、雰囲気とも合った髪型で感動しか出てこない。



顔は、ピンクと茶色とラメのアイシャドウを組み合わせて目が少し大きく見えるキラキラメイク。



少しだけ増やしてもらったシェーディングのおかげで顔はいつもよりずっと小さく見えるし、塗り直してもらったリップだってとってもかわいい。



そして服は、メイド喫茶というオーソドックスなテーマに合わせて、シンプルなロングスカートのメイド服を。



丈はだいたいふくらはぎの下部あたりまでで、回るとふわっと裾が広がるのがとってもかわいい。



フリルも適度についているし、一応まだ尊都さんに「雇われている」立場としてこういうの着てみたかったから、着られて嬉しい。



そう。今日は、「おかえりなさいませ、ご主人様♡で彼氏の心をズッキュン!大作戦☆」で尊都さんをドキドキさせようという魂胆なのだ。



ちなみにこれはみっちーが命名した。ズッキュンってなに、ズッキュンって。



でも、巷ではかわいいメイド服を着た萌え萌えなメイドさんにそういうことを言ってもらうのが人気らしい。



そういえば「おかえりなさい尊都さん」とは言ったけど、ここまで萌え萌えなおかえりは言ったことがないので、私もちょっと楽しみだ。



ちなみにこのメイド服は、この前尊都さんと一緒に昌之を倒したとき、作戦参加の報酬としてもらった立派な「お給料」で買った。



だから尊都さんにメイド服を着るとは言っていないが、コスプレをするとは報告してある。



そのときに「刹菜の太ももを守るために必ずロング丈のコスプレにすること」と念押しされており、そのためメイド服は長めのスカートをチョイスした。



まああんまり短くてもなあと思っていたし、別に害はない。




「見た目清楚なのにメイクキュートだし口をひらけば萌え萌え刹菜節……最高だわ」



「刹菜ちゃん、指名していい?」



「えっ、指名??」




メイド喫茶にはそんなシステムがあるのか。



よくわからないので詳しく聞いてみると、友達は一気にわたわたと慌てた。




「とりあえず!指名が入るようなお店は、刹菜ちゃんには縁のない話だから!」



「そうそう!」




友達がそう言い募るなら、私は知らなくてもいいか。



とはいえ気にはなるので調べてみようと思いつつ、その場ではそれ以上聞かないことにした。




「いい?刹菜」




すると、みっちーにガシィと肩を掴まれた。




「よくわかんない男にナンパされたら、『そういうサービスはないのでご遠慮ください』って言うのよ、いい?」



「な、なるほど?」



「連絡先は教えちゃだめだし、知らない人についていっちゃいけないからね?」



「それは大丈夫だよ!」



「しつこい男がいたら私たちがフンッ!ってするから。困ったら呼んで!」




そのフンッ!の内容を詳しく質問したいところだが、それを聞くべきでないことくらい私にもわかる。



私は、ひとまず大人しく頷くことにした。