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「あっ、みっちー!!」
翌朝。
精神的な経過観察と傷の治療のためにちょっとだけ入院していたみっちーが、帰ってきた。
教室で今か今かと待ち構えていた私たちは、登校してきたみっちーを見るなり大はしゃぎだ。
「おかえりみっちー!」
「おかえり!」
そして私も前と変わらない笑顔で、みっちーに抱きついた。
「おかえり、みっちー!」
すると、一瞬だけみっちーは泣きそうな顔になりながら、笑った。
「うん、ただいま!」
――それと。私は尊都さんに頼んで、とあることをしてもらった。
普段「刹菜」や「刹菜さん」と呼ばれている私にはあまり関係のないことだけれど、名字を、ちゃんと本来の名字にしてもらった。
今までは名字はわからなかったから、適当な名字を名乗ってフルネームにしてたんだけど、やっと名字がわかったから。
だから、今日から私は――夜明 刹菜だ。
「ってことでみっちー、今日の放課後みんなでデートしない?」
「この前言ってたカフェ行こ!新メニュー出たらしいよ!!」
「行く行く!楽しみ!!」
なんて幸せな日々なんだろう。
こうして親友たちと青春して、尊都さんと過ごして。
これが、私たちの朝だ。
もう辛い夜は明けた。
苦しみを見守っていてくれた星影は、今や私たちの幸せを見守ってくれる存在になっている。
あの日攫われたことをきっかけに、大きく変わった私の生活。
『雇ってあげるから、俺んとこ来てよ』
これからは、あの人と一緒に生きていく。
そう決めた、そのとき。
「あのう、刹菜さぁん……」
「あれっ、校長先生?どうかしましたか?」
「その、『あの方』がいらっしゃっていて……」
「え」
校長先生の言葉にびっくりして、急いで校長室に行ってみる。
すると、やっぱりスーツ姿の尊都さんがソファに我が物顔で座っていた。
「どうしたんですか、尊都さん!」
「これ、忘れ物」
「あ」
尊都さんが掲げたのは、今日のお弁当。
どうやら置いて出てきちゃったらしい。
「それでわざわざ、尊都さんが届けにきてくれたんですか?」
「ついでに刹菜の顔が見たくて」
「もう。今朝見たのに」
「俺はいつでも見たいよ」
その言葉に私もです、と返して。
私はお礼の言葉と共に、尊都さんに軽いキスをした。
「今日、プロジェクターが届くんだ。帰ったら2人で見ようか」
「もう⁉︎昨日の今日ですよね⁉︎」
「まあ、お金があれば、ね」
「おう、財力……」
もはや開き直ってるじゃん、この人。
でも2人でまた星を見れるのは嬉しい。
だから私は、もう一度尊都さんにお礼を言った。
「……ねえ、刹菜。刹菜は今、幸せ?」
「幸せですよ。尊都さんは?」
「うん。俺も、幸せ」
尊都さんの笑顔は晴れやかだ。
尊都さんのそんな笑顔を見て、私もハッピーだ。
プラネタリウム、楽しみだなあ。
「私、あなたに会えてよかった」
そう言うと、尊都さんは満面の笑みとキスをくれた。
幸せな毎日。苦しみを超えた先の希望。
生きることを諦めなくて、本当によかった。
これからもこうして、尊都さんと一緒にいたい。
「それじゃあ、いってらっしゃい、刹菜。また夕方に、ね」
「はい、また。尊都さんも頑張ってくださいね」
いってらっしゃいを交わして、この先の未来に想いを馳せる。
夜が明けた、喜びと希望の朝。
私たちは、明るい未来に向かって一緒に、歩んでいくのだ。
「これから俺が、悲しんでる暇ないくらい幸せにするから。帰ったら手始めにプラネタリウムね」
「はい!楽しみです!」
そうして間違いなく、尊都さんは与えてくれるのだろう、私に。
星の光すら溶けるくらい、熱くて甘い、幸せな夜を。
《今夜、星影を溶かして》
fin.



