今夜、星影を溶かして【完】


「わあ……!!」




私は、頭上に広がる一面の星空を眺めて、思わず声を漏らした。



今日は7月7日、私の誕生日。



里帰りしたあーくんの付き添いから街へ帰る日だった今日、尊都さんは街の少し南側にある大きな山のコテージに連れてきてくれた。



街の明かりから離れたその場所からは溢れんばかりの星々が眺められて、思わず目が輝いた。






あのあと、私はお父さんとお母さんに、あーくんと尊都さんと黒葉さんの紹介をした。



お父さんとお母さんは3人にたくさんお礼を言って、それから、私が尊都さんと一緒に生きる決断をしたことも喜んでくれた。



そしてせっかくだから、お父さんとお母さんは、街の中でも治安がとびきりいい区画に移住して来てくれるそうだ。



引越し業者や資金の手配は尊都さんがすると言っていた。本当にありがたい。



それから昨日と一昨日で、あーくんの里帰りにも付き添ってきた。



あーくんの孤児院のシスターはずっと、あーくんを攫われてしまったことを後悔していたらしい。



黒葉さんにすべてを聞かされたらしいシスターさんは、あーくんを見るなり号泣して、あーくんを抱きしめていた。



あーくんも、幸せそうに見えた。



あーくんと黒葉さんは、もう先にお屋敷に帰っているみたい。まあ、私たちがコテージに寄り道してるだけだし。



私たちも、今日はここに泊まって明日にお屋敷に帰る予定。








「……」




私は、ことの顛末を一通り思い出すと、バルコニーに尊都さんが用意してくれたソファベッドに転がる。



尊都さんも隣に寝転び、私たちは2人で満天の星空を見上げた。




「……俺はさ。前までは、星や宝石に価値なんてないと思ってたよ。美的感覚なんてなかったし、ご飯にもならないそれを愛でる趣味もなかった」



「……」




尊都さんの声は、語る内容にそぐわずとても明るい。



不思議に思って横を見ると、ちょうど私に視線を移した尊都さんと目が合った。




「けど、今は違う。刹菜と見る星は、こんなに綺麗なんだね」



「!」




それだけ言って、尊都さんは視線を空に戻した。



絡み合っていた視線の代わりに、尊都さんは私の手を取って指を絡める。



まるで、一緒に見ているこの瞬間を噛み締めているみたいだった。




「…………尊都さん」




その姿があまりにも綺麗で。



またその行動が、あまりにも愛おしくて。



耐えきれずに名前を呼ぶと、尊都さんは「ん?」と優しく私を見てくれる。




「大好きです!」



「どうしたの、急に」



「へへ、言いたくなりまして。あとそれから、ありがとうございます。いろいろと」




こんなにしてくれた尊都さんへのお礼は、一つや二つで済む量ではない。



だから「いろいろ」にその万感の思いを込めて告げると、尊都さんは私の頭を撫でてくれた。





「俺も、大好き。……誕生日おめでとう、刹菜」




尊都さんは、ふにゃりと表情を崩すようにして笑った。



その笑顔は、まるで気が抜けたような――明らかに心を許してくれているのがわかる表情で。



愛しい感情が湧いてきて、尊都さんの頬をするりとなぞった。




「…………」




美しい、星空の下。



どちらからともなく唇を寄せ合い、私たちはキスをした。



視界には、美しい尊都さんの顔と、綺麗な星々。



誰の邪魔も入らない静かな山奥で、私たちはお互いの愛を送り合うように口付けを交わす。




「ん……ふっ……」



「そう、できてるよ。……かわいい」




ふう、と鼻で息を吐けば、偉い子だというふうに頭を撫でられ、そのままキスが深くなる。



割り入ってきた舌が上顎をなぞり、そのまま私の舌に絡んできた。




「ぁ……んんぅ……っ」



「……刹菜」




熱のこもった声で、名前を呼ばれた。



私を組み敷いた尊都さんが、星空を背景にしながら笑っている。




「……ベッド、行こうか?」



「……」




恥ずかしくて声を出さずに頷くと、尊都さんは嬉しそうにふわりと微笑んでから私を抱き上げた。



ちゅっと、かわいらしい音を響かせて軽く唇を啄まれ、そのままコテージの中に入る。




「今度、プラネタリウムができるプロジェクターでも買おうか」



「いいですね!やったー!」




お礼の気持ちを込めて、今度は私から尊都さんに軽いキスを贈った。



それを心地良さそうに受け取ってくれた尊都さんは、そのままゆっくりと私をベッドに下ろす。



そして上着を脱ぎ、また私に噛み付くように口付けた。




「ん……尊都さん」



「なーに?」



「へへ……だいすき」



「っ……俺も、だいすき」




ぎゅっと、強く手を繋いだ。



それだけですべての体の力が抜けて、尊都さんにすべてを委ねる。




「……かわいい。大好きだよ、刹菜――」




そうして、私たちは、2人きりのコテージで夜を明かすのだった。