*
「――さて」
構成員に、室内にいた女子高生を保護させ、尊都やその女子高生が完全に施設から出た後。
俺は、静かに冷たい目で昌之を見下ろした。
「えーっと……なにマサユキだっけ……笹かま?」
「笹原です、黒葉さん」
「あそうだ、それそれ」
部下の言葉に頷いて、俺は銃を片手にしゃがみ込む。
絶望して魂が抜けたような様子の昌之は、鼻水と涎を垂らして虚に床を見つめていた。
俺はぺちぺちと昌之の頬を叩いて声をかける。
「大丈夫か?生きてる?」
「ぐ、ぁ…………」
「体は生きてんな。精神はズタズタだけど」
とはいえ、汚れは掃除しないといけない。
こいつの隠し持っていた情報や切り札はすべて取り上げた。こいつはもう用済みだ。
街のためにも、こいつを野放しにするのはよろしくない。
「なあ、知ってるか、昌之」
気が向いた俺は、無様な格好の昌之に話しかけてみた。
まだ反応する気力はあるようで、わずかに視線だけを俺に向けてくる。
「この街はまだ弱肉強食の意識が強い街だ。要するに、勝ったほうが偉い。わかるか?」
「…………」
マフィアという恐ろしい連中に支配されている街だ。勝者が偉いなんて当たり前。
金と武力という絶対的な権力に従うようにこの街はできている。昔からずっとだ。
「そんで、お前は尊都との実力差も見極められずに負けたってわけだ」
ぴくりと昌之が動いた。
だけど動く気力はもうないようで、地べたを這いつくばった格好のまま動かない。
潰された虫みたいだ。
「……お前ならわかるよなあ。この街で、哀れで愚かな『敗北者』はどうなるのか」
あまりにも情けない昌之の姿に興味を失った俺は、そう言って昌之のこめかみに銃口を突きつけた。
「……!!」
「さっきは刹菜たちがいたから尊都が撃たなかっただけなんだぜ。俺たちマフィアを相手にしておいて生き延びられるとは、もちろん思ってないとは思うけど」
ぶるぶると震える害虫を仕留めるのは、今回は俺の役目だったってわけだ。
俺たちはマフィア〈REGALIA〉。
俺たちの矜持に従い、邪魔な汚れは消す。
非人道的で犯罪者なのは、昔この街を支配してたらしい極悪ヤクザの藤原組となんら変わらない。
「じゃあさようなら、笹原 昌之。せいぜい来世はまともに生きろよ」
「あ、あぁぁっ……!!!」
明確な死を前に震える敵を、なんの感慨もなく見つめ蔑み。
俺は、躊躇うことなく人差し指に力を込めた。
「…………はあ」
呆気ない叫び声と共に、返り血が顔につく。
それを拭い、迅速に俺は部下に指示を出すのだった。
「……掃除しろ」
「はい!!」
慌ただしく動く部下を横目に、俺はもう一度、深いため息をついた。



