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尊都さんと恋人になってから、一週間くらいが経過した。
キス大好きな尊都さんにときどき襲われそうになりつつ、仕返しに私も仕掛けたりしつつ、穏やかな日々を過ごしている。
だがまだ解決していないことがある。
そう、人攫いの話だ。
監視カメラやみどりさんの件で一旦落ち着いてはいたし、今は誘拐されたとかは聞かないけれど。
尊都さんが言うには、まだ終わっていないらしい。
まあ、危険なことが起こるならひとつひとつ潰していけばいい話だ。
そのために、私もできることをしたい。
だけどまずは。
「刹菜ちゃんご飯食べよ〜」
「うん!」
腹ごしらえだ。
腹が減っては戦はできぬって言うし。私は腹が減ってるから戦をしていた身なんだけど、まあそこはどうでもいい。
とにかくいつでも万全の体調でいないと、気づけることにも気づけないし。
「ってあれ、みっちーは?」
「せんせーから呼び出しされてるんだってー」
「ふうん……それじゃあ、先に行ってようか」
御馳走が詰まったお弁当を手に、柔らかい日差しが差し込む中庭へ。
今日のおかずはなんだろなと胸を躍らせながら、私は友人たちと教室を出た。
この日のメインはチキン照り焼きを細かく切り分けたもの。
美味しいソースがかかっていてとても私好みだ。
キッチンの鈴木さん、また腕を上げてる……。
「んまあ〜!」
「マジで美味しそうじゃん。お願い!お母さんの唐揚げ一個と交換!」
「交渉成立!ん、唐揚げもうまー!」
いつものようにお弁当の具材を交換しながら食べ進めるのだが、おかしい。
みっちーが来ない。
そもそも、みっちーは先生に呼ばれるほど提出物を出さないとか、そういうわけじゃないし。
成績は優秀だし、行事関連の連絡をする時期でもない。
どの先生に呼ばれたのかもよくわからない。
「遅いねえみっちー」
「教室にいるのかなあ……」
なんだか胸騒ぎがしたので、私は残っている具材を一気に口に詰め込んだ。
もしゃもしゃと素早く噛んで飲み込むと、私はお弁当を纏めて立ち上がる。
「ごめん、これ私の席の上に置いといて。みっちー探してくるー」
「はーい」
「みっちーが入れ違いで来たら電話してね」
空っぽになったお弁当箱を託し、私はとりあえず職員室に急いだ。
……本当に気のせいかもしれないし、ただの勘なんだけど、真面目に嫌な予感がする。
それに、知っているのだ。
私の野生の勘は侮れない。……それに。
こういうときほど、嫌な予感は当たってしまうものなのだから。
先生にみっちーの行方を聞いたところ、特に職員室には来ていないようだった。
だがみんなから連絡は来ていない。教室はさっき寄って別の友達にみっちーが来たら電話するように頼んだが、それもない。
この学校に空き教室はないし、使わない実習室などはいつもは施錠されていると聞いた。図書室は今日は蔵書整理の日だ。
校長先生と養護教諭は出張中だ。グラウンドと裏庭には見る限り誰もいない。事務室はさっき寄ったけどいなかった。
「…………」
少しずつ頭の中でみっちーの行き先の選択肢を潰していくと、一つだけ、残る場所がある。
……屋上だ。
そこまで考えると、私は迷わず階段を駆け上がった。
そして一瞬も逡巡することなく屋上の扉を押し開く。
少し錆びたような鈍い音と共に視界が開けて、ぶわっと風が髪をはためかせる。
「……あ?誰だお前」
「あっ……?だ、だめっ、来ないで、来ちゃだめ!逃げて!!」
「――……」
そこには。
「……なにしてるんですか?」
「だからやめて、来ないでってばっ!!」
銃を向けられ今にも撃たれてしまいそうな、みっちーがいた。



