「おめでとう、刹菜。リレーすごかったよ」
「ありがとうございます、尊都さん!頑張りました!」
帰ってから、尊都さんに優しい笑顔で頭を撫でてもらってほくほくの私。
リレーは、無事追い抜いて一位を獲得した。
みっちーたちに「よくやった!」と抱きついてもらえて、今日は嬉しいことばかり。
さらに最終結果も優勝だった。
担任の先生からスポーツ飲料を奢ってもらえたし、みんなでそれを乾杯した。
体育祭というイベントを経て、クラスのみんなともっと仲良しになれた気がしているのだった。
「それから――」
私が体育祭のことを思い返していると、尊都さんは私の髪を手に取る。
帰る前にみっちーが巻き直してくれたおかげで、かわいい髪型のままだ。
ハチマキは取ってるけど、髪型だけでも気に入ってもらえているということだろうか。
尊都さんは、黙ってされるがままの私をゆっくりと眺める。
「……やっぱりかわいい」
「!」
褒め言葉を口にする尊都さんの笑顔は、あまりにも優しい。
綺麗で、慈愛とあたたかさが滲み出ている笑顔だ。
もうだいぶ尊都さんのお顔は見慣れてきたと思っていたけれど、なんだかドキドキしちゃう。
好きと自覚したせいか、真っ直ぐ目を見ることすらできない。
恋愛ってこんな感じなんだな……。心臓がすっごくバクバクしてる。
ドキドキしてることとか、いろいろ恥ずかしすぎて目を泳がせてしまう。
すると、当然の如く尊都さんは挙動不審な私に気付いてしまうわけで。
「……あれ」
穏やかな尊都さんの声に、いじわるな響きが入った。
「照れてるの?刹菜」
「っ!」
ぶわっ、と熱が一気に頬に集合した。
ば、バレてる!!
気づくの早すぎでしょ。私が隠せてないだけなのか、尊都さんが鋭いのか……。
どう誤魔化すか考えていると、尊都さんはさらに爆弾を落としてくる。
「昼間の生徒には、照れてなかったのにね」
「えっ」
「……告白されてたでしょ。校長室から見えてたよ」
「見てたんですか⁉︎」
私が校長室の様子を見たときはいなかったのに。
あともうちょっと様子を伺ってたら、手を振ったりできたってことか。
それにしても、私たちの会話は聞こえてなかっただろうし……仕草だけで判断してたのかな。
すごい洞察力なんじゃないだろうか。
「俺には照れてくれるの?」
いじわるな笑顔で問いかけてきた尊都さん。その質問に、私は素直に答えられるわけがない。
「て、照れてませんから!!」
「そう?」
「そうです!!」
尊都さんがくすくす笑っている間に、私はその場から逃げ出す。
い、いけないいけない!っていうか、このままだとなんかいろいろまずい気がする!
決して私の「好き」がこれ以上溢れ出さないように、頬をぺちぺちと自分で叩いて気持ちを引き締めた。
だめだめ。好きにはなっちゃったんだけど、この想いを告げるつもりはないんだから。
なんとかして誤魔化し続けないと!
*
「あーあ、逃げちゃった」
ぽつりと呟くと、刹菜が走り去っていった方向から、今度は入れ違いで黒葉が歩いてくるのが見えた。
「今刹菜がものすごい速度で走ってったけど、どうかしたのか?」
「いいや、まだどうもしてないよ」
「まだ」かよ、という呆れた視線は無視しておく。
そして、俺はこれからの刹菜との関係について思案した。
……それこそ、最初は俺のことを刹菜に教える気は毛頭なかった。
だけど今はどうだろう。刹菜を好いた俺は、どうしたいだろうか。
「……でも、そうだな」
答えは、ひとつだ。
「――そろそろ、話してもいい頃かな」



