今夜、星影を溶かして




「どうしたの刹菜ちゃん。ぼーっとしてんね?」



「わかる?みっちー!なんか私最近上の空で!」



「あんま自分で自分を上の空って言わなくない?」



「それはそうなんだけど、私でもわかっちゃうくらいぼーっとするんだよ……」




私の変な様子に気づいてくれた第一発見者みっちーに訴える。



最近、私はもうずっと変なことばかり考えてしまうのだ。



そう――尊都さんと、プリクラを撮った日から!!




「私、どうしちゃったんだろう……」



「ずいぶん悩んでんじゃん。なにに苦しんでるの?」



「いやあ、それがわからないっていうか……」




そもそも尊都さんとの関係は迂闊に話せないし。



でもこのまま1人で悩んでいても、答えなんて出ないだろう。



かと言って、尊都さんに「尊都さんのことが頭から離れないんです!」なんて言えるわけがない。



それならいっそ、ぼかしながらでも相談してみるべきかな?



私は、言葉を選びつつ、とりあえずみっちーに相談してみることにした。




「最近、とある男の人にめっっっっちゃ助けてもらったんだよ」



「そうなんだ?」



「うん。その人に今もよくしてもらってるんだけど、なんか……その、最近一緒に過ごしてから、なんかずっとその人のこと考えてるっていうか……」



「えっ⁉︎」




みっちーが驚愕の声を上げた横で、言った後から恥ずかしくなってくる私。



なんか人に相談するの、思ったより恥ずかしいな。貧乏相談なら絶対に恥ずかしくないのに。どうしてだろう。




「……あわわわ……」



「どしたのみっちー」



「え、あ、いやあ……は、春だねえ?」



「え?ああまあ、そうかもね……?どっちかというと初夏だけど」




最近は地球温暖化のせいで5月の今でももう暑くなって……って、そうじゃなくて。



なぜいきなり春の話に?




「もう……!この世間知らず!というか鈍感!ばか!」



「えっ、急に悪口⁉︎ごめん⁉︎」



「違うんだよぉ、褒めてんの!」




みっちーは私の胸をぽかりと叩いて大袈裟な泣き真似をした。



褒めてた?なんかばかとか言われた気がしたんだけど。世間知らずとか、鈍感とか。




「みっちーは、私の悩みについてなにかわかるの?」



「わかるよ!わかるに決まってんじゃん!」




みっちーはどう言ったものかと困り顔だ。



答えに悩む感じらしい。難しいことを相談してしまっただろうか。



そんなことを考えていると、みっちーは急に取り調べ警察官のようなキリッとした顔で問いかけてくる。




「刹菜ちゃんってさ、その男の人と一緒にいて、楽しい?」



「もちろん」



「これからも一緒にいたい?」



「うん」



「その人に喜んでもらいたい?」



「そうだね」



「それで、さらにずっとその人のことを考えてしまう、と」



「その通り」




なんか心理テストみたい。



そして心理テストを出してきた本人であるみっちーは、なぜか頭を抱えている。




「えっとみっちー、大丈夫?」



「私の友達がちょっと鈍感すぎて悩んでる」



「ごめんってば!答え教えてよ」



「ダメ!」



「えぇ……」




クワッと吠えるように拒否されてしまい、思わず勢いを失ってしまう。



そんなに鈍感だろうか。というかなにに鈍感なんだろう。人の気配にはたしかに鈍感だけど、そういうことじゃないし。




「はあ……どうしたものか……」




相変わらず悩むみっちーに、もはや何も言うことができない。



でも私のために悩んでくれているわけだから、いっぱい感謝しないと。



そう思っていると、トイレに行っていたらしい他の面々が帰ってきた。




「え、どしたんみっちー、頭抱えて」



「あのね、それが――」




みっちーが、他の友達にも、私が言ったことをそのまま伝える。



そうするとみんなが一斉に、みっちーと同じように頭を抱えて唸り出すことになってしまったのであった。



なぜに。




「とりま、その人体育祭に来れないか聞いてみたら?」



「え、どうして?」




友達の1人が提案してくれた内容に、思わず首を傾げる。



たしかにもうすぐ体育祭があるけれど、それと尊都さんにいったいなんの関係が?




「どうしても何もないの!聞いてみなさい!」



「はいわかりましたお姉様!」




ビシッと言われてしまっては仕方ない。



私は背筋を伸ばして敬礼し、体育祭のことを誘ってみようと心に決めた。



とはいえ尊都さんは多忙だし、どうだろう。



わからないけど、聞くだけ聞いてみよう。話はそこからだ。みんながそう言うなら、きっとそれがいいんだろう。



その友達の言葉に、みっちーたちも文句はないようだった。




「いい?刹菜ちゃん」



「うん」




みっちーたちは、私の手を大真面目な顔で握ってくれた。



その真剣な顔に私も真面目に相槌を返し、言葉を待つ。




「いつでも、相談してね。特にその人についての話。刹菜ちゃんの悩みの解決、親友の私たちが絶対なんとかするからね!」




「!!」




親友――!



ついに言ってもらえたその二文字に、目を丸くする。



……そうか、ついに私はみんなの親友になれたんだ。親友って、思ってもらえるくらい仲良くなれたんだ。




「うん、ありがとう!」




最初はあんな底辺の生活だったのに、今やこんないい人たちに囲まれている。



ろくな人生歩んでこなかったけど、ようやく私にも幸せが巡ってきたというわけだ。



いやあ、やっぱり苦労したあとにこういうことがあるから、人生ってヤミツキになるんだよね。



本当に、最近は嬉しいことだらけだ。



私は、溢れ出す幸せを存分に堪能しながらみんなに精一杯の感謝を伝えたのだった。