「いいえ、全く!」
「…………」
私は、その問いに迷うことなく否定を返した。
その様子に、珍しく驚いた表情の尊都さん。
「あっ、言っておきますけど、この時間が嫌っていうんじゃないですよ?」
「うん、それは見てればわかる。だからこそ、この時間が永遠になればいいのにな、とか考えてるかなと思ったんだけど」
よかった、私の気持ちはわかっていたらしい。
ひとまずそのことに安堵しつつ、私は尊都さんの瞳をまっすぐ見つめて真実を告げる。
「私、最近ずっと『今までで一番幸せだ』って考えるんです。もちろん今日も。昨日も一昨日も思いました。尊都さんが、毎回私の幸せの最大値を更新してくれるから」
「それはよかった」
幸せは自分で掴むものとは言うけれど、私が掴んできた幸せを簡単に上回るほどの喜びを、尊都さんは毎回くれる。
そうなると、人間は欲深い生き物だから、願ってしまうのだ。さらに、その先を。
「だから私、次も絶対嬉しくて幸せなんだろうなって、次の日がずっと楽しみで」
「!」
「時間が止まればいいとは思いませんよ。次はもっと幸せなはずですから」
もちろん、その次回をどう楽しむかは私次第ですが――と私は付け足した。
「…………」
「ご理解いただけました?」
「……なるほどね。よくわかったよ」
それはなによりだ。
尊都さんにプレッシャーをかけたかったわけではないが、私はずっと嬉しいこと続きなのを知っておいて欲しかったから。
伝わってよかった。
「刹菜って、向上心があるタイプだよね」
「自分の可能性を信じてるだけですよ」
努力が報われない世界線への恐怖が少ないとも言える。
もちろんぜんぶ無駄だったら、とか考えたことはあるけど。
未確定の未来に怯えていたら、できることもできないし。
それなら、楽しみな未来に向かって頑張ったほうがいいなって思っただけだ。
「……いいね、それ」
「でしょう?」
この究極のポジティブシンキングのおかげで私は生き延びてきたと言っても過言ではない。
要するに、考え方次第なのだ、全ては。
だから私は、私の考え方に強い自信を抱いている。
そんな私を見て、尊都さんは小さく、慈愛のこもった笑顔を向けてくれた。
「刹菜のそういうところ、俺は好きだよ」
……それが、なんかこう、あまりにも蠱惑的で、目が離せなくて。
ただ褒めてもらっただけだというのに、結構ドキッとしてしまった。
あっぶない、軽率に惚れるところだった。
恋人はいないって言ってたけど、尊都さんのことが好きな人はいくらでもいるだろうし、引く手数多なんだから。
尊都さんがちゃんとなにも気兼ねなく恋人を選べるように、恋心は抱かないようにしないと。
近くに私がいる状態じゃあ、選ぶときに気を使わせちゃうだろうし。
気を引き締めてそう決意する。
そして私は、心の中を落ち着けるために話題を変えることにした。
「さて!」
わざと明るく言って、尊都さんに向き直る。
実は今日は、尊都さんにとあるおねだりをするつもりなのだ。
だけど、叶えてくれるとわかっていても、こんな畏れ多いことを頼むのは緊張するなあ。
「尊都さん。折り入ってお願いがあるんです」
「なに?」
「あれを」
私が真面目な顔でびしっと指さしたのは、かわいい女の子の顔が大きく映っている箱――そう。
プリクラ。
「わたしと、プリクラ、撮ってください」
「………………」



