今夜、星影を溶かして







まあそのあとなんやかんやあって、尊都さんと遅い昼食を食べて。



私は、尊都さんととある場所を訪れていた。




「ほわああ……⁉︎」



「ぷっ……目キラキラしてんね」



「当然です!だって、だって!」




私たちが来たのは。尊都さんが連れてきてくれたのは。




「ゲームセンターなんて、アオハルの憧れがいっぱい詰まってるじゃないですか!」



「まあ、たしかに。そうかもね」




そう。高校生の青春に刻まれる素晴らしい場所。



――ゲームセンター!




「……というか、尊都さんがゲームセンターにいるの、なんかおもしろいですね」



「そう?」



「なんかこう、綺麗なユニコーンが居酒屋で芋焼酎飲んでるみたいな感じします」



「くっ、くく……なにそれ……」




私の中の愉快さを表現した途端肩が震える尊都さん。



自分がゲームセンターにいる特異さを理解してもらえたらしい。



とはいえ、尊都さんの神々しさはユニコーンみたいだけど、ユニコーンにしては魅惑的すぎるよね。



でも悪魔にしては美しいし、天使にしては冷たい人だ。



やっぱり唯一無二なんだなあ、となんとなく思う。




「さて、じゃあ刹菜。まずはなにする?」



「クレーンゲーム!!!」



「ふはっ、りょーかい」




尊都さんが目一杯遊べというのだから、お言葉に甘えるしかないよね。



私は遠慮することなく、千円札を100円玉に両替した。




「クレーンゲームにもいろいろあるけど、なににしようか?」



「うーん……かわいいぬいぐるみとか欲しいかも?」



「じゃああれとかどう?刹菜好きそう」



「えっ、かわいい!」




尊都さんが指さしたのは、もちもち素材のクマさんのぬいぐるみ。



中くらいのサイズだから寝るときに抱っこするとちょうど良さそうだ。



っていうか、尊都さん私の好み熟知してる?ドンピシャで欲しいんだけど。



そう思って隣を見るも、涼しい顔で「どうしたの?」と言われなにも聞けなかった。



むう、なんかこう私を把握されていると悔しい。



悶々としながらもクレーンゲームに近づいていく。




「これを取ると。むむ、なるほど……」




一分以内に場所を決めて取る形のようだ。よし、と決意して100円玉を一枚入れる。



ギュインッ!とポップな音が鳴って、カウントダウンがスタートした。




「ふぉぉぉ……これがクレーンゲーム!!」



「……っふ……ふふ……」




もはや私の一挙手一投足に面白さを感じているのかもしれない尊都さんの笑い声に応援されながら、私はレバーをかちゃかちゃと動かした。







「……なんか、意外だな」



「そうですか?怪力なだけじゃないんですよ、私って。ピッキングとかもできるんですから!」



「それはすごいな」




結果。



私はなんと、3回という驚きの試行回数でクマさんをゲットした。



そしてその先にあった柴犬も2回でゲットできた。満足満足、という気持ちでふんぞりかえる。




「そういう尊都さんはクレーンゲームできるんですか?」



「やったことないけど、できるんじゃない?」




さらりとそう言ってのけたのが学校で仲がいいみっちーとかだったら、「またまたー」とか言っていたかもしれない。



だけど尊都さんはやっぱりできそうである。逆になにができないんだろう。とても気になる。



でも苦手なことがあったとして頑張ってできるようになってそうだな、などと考えながら、私はゲームセンターを見回した。




「次はなにをやりたい?」



「カーレースゲームとかどうですか?尊都さんと勝負で!」



「へえ、俺と勝負?受けてたつよ」




勝負を持ちかけると、途端に尊都さんはにやりと笑みを深める。



えっこわ、そして綺麗なお顔……。



やっぱ勝負はやめたほうがよかったかも、なんて。



尊都さんを前にしてやめるなど言えるはずもなく、私は尊都さんに手を取られ、カーレースゲームへと連れて行かれていく。




「ちなみに、俺が勝ったらなにしてくれる?」



「えっ!えーっとまあ、私ができることならなんでも!」



「そう言うと思った。覚悟しといてね」



「そちらこそ!私が勝ったら明日の夕ご飯はハンバーグにしてくださいね!」



「そのくらい普通に言ってくれればいいのに」




それを言うのはなしでしょう。だって、尊都さんだって私に言ってくれれば、私はいつだって、できることならなんでもするのに。



こういう勝負事で賭けるからこそおもしろいというのはわかっているはずだ。



そう思ったが、本人もそれはわかっているからか、それ以上何か言ってくるようなことはない。



そうして私たちはそれぞれ100円玉を入れ、ハンドルを握った。



……ところが。




「うわっ⁉︎な、なんか飛んできたー⁉︎」



「モタモタしてると置いてくよ」



「もうだいぶ置いてかれてますが⁉︎」




初めてみれば、あら驚き。



運転とは難しい。どっちがアクセルなんだっけ?と悩んでいる隙に、私はなぜか飛んできたピコピコハンマーに潰されてしまった。



次の瞬間にはバナナで滑っていたり、七色のNPCが横を通り過ぎていったり……忙しい忙しい。



結局尊都さんは堂々の一位、そして私は最下位から3番目という順位でフィニッシュしてしまった。




「悔しい…………」



「そもそも、俺運転免許持ってるから。刹菜が攫われたときも俺が迎えに行ったよね?」



「そうでした、経験値の差かあ……」




とはいえ、この順位のままでは終われない。



ルールと感覚は今ので掴んだから、次こそはマシになるはずだ。




「お願いします、もう一回!コンティニュー!!」



「いいよ。でもその代わりまた負けたら俺の言うこと聞いてもらうの、2回にするからね」



「今度こそ食らいつきますから!」




ボウボウと燃える志を胸に抱き、輝く目標を見据えてもう一度ハンドルを握る。



だが一丁前だったのは目標だけで、順位は5位まで上がったものの、追いつくのにはまだまだかかるのだった。




「ぷあーっ、楽しかった!!」



「刹菜、だいぶ上手くなってたね。俺にアイテムをぶつけられるようになったなんて成長したじゃん」



「ですよね!!一回しか当たりませんでしたけど!」




あのあとも何度か再挑戦し、カーレースゲームだけで六枚の100円玉を消費したあと。



結果的に2位で惜敗というところまで這い上がり、そこで私のカーレースへの気力は尽きた。



あれ、意外と体力使うんだなあ。運転なめてた。



それでも、アイテムを一度だけ尊都さんにヒットさせることができたのは大きな進歩ではなかろうか。



6つも願いを聞くことになっちゃったけど、尊都さんとカーレースができて私は満足だ。




「俺も、刹菜との勝負楽しかったよ。ありがとう」




そう言って撫でてくれる尊都さんはやっぱり優しいと思う。



とても弱くて勝負になんかならないほうが多かったのに、自分なりに楽しんでくれたということだろう。



私は、それが嬉しくて満面の笑みを返した。