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刹菜が退出したあと。
俺は黒葉が持ってきていた滞在に関する書類を「みどり」とやらに書かせていた。
警察の組織を調べたときにこいつはいなかったから、やっぱりこいつは警察なんかじゃない。
それなら絶対に事情があるだろうから、簡単に口を割らないことがわかっていたのだ。
まあ、警察は警察で情報を話すのは渋りそうだけど。俺の支援と保護に甘えている今の市警では、俺たちに逆らうことはできはしない。情報を得る難易度を考えるなら、こいつが警察官だったほうが簡単だったんだけど。
そんなことを考えながら、つらつらと文字を書いていくペンを見つめる。
テキトーでありながら読みやすい文字で書かれた名前に、俺は目を走らせた。
「…………」
こいつと刹菜がどんな関係なのかは、まだわからない。
刹菜は覚えていないみたいだったし、刹菜を狙っている可能性だって捨てきれない。
だが、こいつが刹菜の味方かどうかは、これから見極めればいい話だ。
俺は「みどり」の書いた書類を受け取り、彼を一瞥してから口角を持ち上げた。
「書類は受け取ったよ。これからしばらくよろしくね?――碧サン」
フルネームは「星野 碧」、か……この感じなら、「みどり」っていうよりもどっちかっていうと……。
「……」
……まあいいか。推測しすぎても余計なことを考えるだけ。
だけど近いうちに詳しく調べてみるかと思いながら、俺は部屋の外の使用人に碧の世話を命じて部屋を去る。
そして、黒葉とともに屋敷の執務室へと向かうのだった。



